お料理説明・背景
いつも明るいマリーサさんの家族は今年に入って大きな転機が訪れた。念願の孫に恵まれ、しかも喜び2倍の双子ちゃん。共働きの娘夫婦は仕事も多忙で結婚してからもなかなか子供を授からなかったが、「孫の顔はもう見られないなって諦めてたのよ!」と大喜び。
「新しい若い命が家にやってくると、周りもどんどん若返るわね!」娘夫婦も現在はマリーサの家で同居中。冷蔵庫の中はいつもに増して手づくり離乳食がぎっしりと並び、いつも飽和状態になっている。
ナポリといえば、三世代同居で大家族なイメージだが、最近はそういった光景は家賃の高騰する町の中心では見かけることも少なくなり、久しぶりに楽しく明るい食卓に私もワクワクする。
お料理上手で料理教室まで開いているマリーサさんのキッチンには、きっちりと材料が書かれた黒板(写真右上)がかけられ、食材にもこだわり、すっかり魚屋さん(写真右下)のお得意様に!
今回「孫には少し早いけど、子供にも優しい夏野菜たっぷりのチャンボッタをつくりましょう。日本人は野菜が大好きだしね! これは、冷蔵庫で2~3日日持ちもするのよ」と言って、つくってくれることとなった。
カラフルな夏野菜がぎっしり詰まったチャンボッタは、南イタリアでは広い地域にわたって食べられる夏の料理。日本で「西欧の野菜の煮込み」と言えば、南仏の“ラタトゥイユ”や、シチリアの“カポナータ”などがよく知られているが、カポナータのように、甘酢な味付けではなく、シンプルなオリーヴオイルがベースの夏野菜の煮物だ。
ハウスではなく太陽光をたっぷり浴びた露地物野菜の収穫が最盛期を迎える7~9月は、どこの市場でも格安で味のしっかりした野菜が手に入る季節。安くて、おいしくて、おなかいっぱいになれるチャンボッタは、家計を支えるマンマたちの創意工夫によって生まれた料理かもしれない。
好みにもよるが、暑い夏の日は冷たくしてパンにのせてブルスケッタにして食べてもおいしい。
今回はマリーサさんが教えてくれたレシピでご紹介するが、下記材料の他にもセロリやジャガイモ、豆などを使う地域もあるので、アレンジも楽しい。ただ、長時間煮込む料理なので、いわゆる葉物野菜は使わないほうがよい。
カンパーニア州在住。イタリアの家庭料理に憧れ渡伊。1997年よりナポリ在住。日本での情報誌編集制作勤務経験を活かし、2005年スローフード協会公式ブック”Slow”日本版の現地取材コーディネーションを始め、様々なコーディネート、執筆を多々手がける。1995年より南イタリア情報サイトPiazzaItalia設立。ナポリにてマンマに習うナポリの家庭料理教室などを主宰。ブログ「ナポリのテラスから」で日々の生活をを綴る。
作り方
- 玉ネギは薄切りでスライスまたは、擦りおろし(調理後消えてなくなるぐらいの感じに薄く)、フライパンにオリーヴオイル大3を注ぎ、10分ほど炒める。(くっつくようなら少し水を足す)(写真a 参照)
- ナスは中心に種があまり入り過ぎてない物を選び、2cm角ぐらいのダイス状にカットする。(写真b 参照)
- ズッキーニは厚さ1.5cmくらいの輪切りにする。(写真c 参照)
- フライパンにオリーヴオイル大5を注ぎ、ナスとズッキーニを炒める。(材料に火がまんべんなく通るくらい10分程度)(写真d 参照)
- ペペローニ(赤と黄)は2cm角くらいの大きさにカットし、オリーヴオイル大3を注ぎ、フライパンで10分程度炒める。(写真e 参照)
- ホールトマトは汁気を出しきって、ダイス状にカットし、水で粗塩を洗い流したケーパー、潰したニンニク、バジリコ8枚程度とオリーヴオイル大2を注いだフライパンで2分程度炒める。(※フレッシュ感を残すため、炒めすぎないように注意)(写真f 参照)
- 大きな鍋に1・4・5・6の全てを合わせて中火にかけ、塩、こしょうで味付けをする。(※塩漬けケーパーの味が濃いので、塩味は少しづつ味見をしながら足す)(写真g 参照)
- 時折混ぜてチェックしながら、約1時間蓋をして煮込む。(※混ぜる際は、なるべく材料をつぶさないようにしながら混ぜ、特にペペローニにはしっかり火が通るようにする)(写真h 参照)