お料理説明・背景
中世後期にアラブ商人が地中海沿岸にもたらしたナス。そのナスは、現代南イタリアの食卓ではトマトと並んで、欠かすことのできない野菜のひとつだ。
ナスを使った代表的なレシピと言えば、このナスのパルミジャーナ。
ナスが旬を迎える夏になると、ナスとトマトソース、モッツァレラチーズの三位一体レシピは、南イタリアではほぼ全域で食べられる、とてもポピュラーな料理。
シチリアでは家の木製雨戸の斜めの木片でできた層を”パルミチャナ”と言うそうで、ナスを層にして焼くこの料理の語源とも言われているが、地中海の交差点とも言われる地理上の理由から、トルコ、ギリシャ、アラブからもたらされた似たようなナス料理が起源との説もある。また、パルミジャーナという名前から、中部イタリアのパルミジャーノチーズを連想してしまうが、南イタリアにおいては、一般庶民が日常で使うようになったのは、第二次大戦後以降なので、実は全く関係ないらしい。そういった背景からこのレシピの起源はカンパーニアなのか?はたまた、シチリア起源のレシピなのか?イタリア料理界の重鎮たちがしばし論争を繰り広げるほど。
夏の暑い時期、バカンス先の海の家で家族総出で玉汗をかきながら、ナスを揚げる光景が頭をよぎる。オーブン料理なので、大人数の量が一度につくれるパーティ向けのレシピだ。「たくさんのチーズや、トマトソースを使った複合的な料理だから、セコンド(メイン)としてお出しする事もよくあるのよ」と、マリアーナさん。確かに、南ならではのかなり食べごたえがある料理なので、セコンドでもおかしくはない。
どこまでもこってりが大好きな、ごく一部のナポリのご家族は、Dorato e Fritto(ドラート・エ・フリット)といって、ナスに小麦粉、溶き卵をつけて揚げる場合もあるが、かなりのカロリーである。
また、「息子が数年前からベジタリアンになっちゃったから、パルミジャーナはしょっちゅうつくるわよ~」という、マリアーナさん。イタリアでもヴェジタリアーノ(ベジタリアン)が急増中。肉を使わないので(注:チーズ等の乳製品は使います)ベジタリアンレストランなどでも人気メニューだ。
少し変化球だが、ナスではなく、同じく夏野菜のズッキーニでつくる場合もある。その場合、トマトソースではなく、べシャメルソースが使われているようだ。
カンパーニア州在住。イタリアの家庭料理に憧れ渡伊。1997年よりナポリ在住。日本での情報誌編集制作勤務経験を活かし、2005年スローフード協会公式ブック”Slow”日本版の現地取材コーディネーションを始め、様々なコーディネート、執筆を多々手がける。1995年より南イタリア情報サイトPiazzaItalia設立。ナポリにてマンマに習うナポリの家庭料理教室などを主宰。ブログ「ナポリのテラスから」で日々の生活をを綴る。
作り方
- ナスは洗って厚さ5mm程度にスライスし、油で揚げる際、飛び跳ねないように軽く乾燥させるか、キッチンペーパーで全体の水分を拭き取る。(写真a 参照)
- モッツァレッラチーズまたは、フィオルディラッテチーズを厚さ3~5mm程度にスライスする。(写真b 参照)
- トマトソースは予め、オリーヴオイル、ニンニクでアーリオオーリオをつくり、濃縮トマトソースまたは、水煮缶、塩を加え、15~30分ほど煮込む(ソースは煮詰めて月の表面のクレーターのような感じになったら)バジルの葉を加えて1分ほどしてから火を止める。(写真c 参照)
- 鍋にフライ用オイルを注ぎ温度が上がったら、スライスしたナスを揚げる。ナスの表面が狐色になったらオイルから出して、キッチンペーパーで油分を吸い取る。
※油の温度はしっかり上げてからでないと、ナスがオイルを過剰に吸収するので注意。また、一度にたくさんのナスを入れると急激に温度が下がるので、少しづつ投入して油の温度を下げないようにする。(写真d 参照) - オーブン用のバットの底に少しトマトソースを敷く。(写真e 参照)
- 揚げたナス、トマトソース、モッツァレラチーズ、粉パルミジャーノの順で重ね、材料がなくなるまで繰り返す。(最低でも2層重ね)(写真f 参照)
- 一番上にはトマトソースを敷いて、粉パルミジャーノをまぶし、バジルで飾り付ける。(写真g 参照)
- 180度のオーブンで焼く。(約45分)
※材料はすべて加熱されたものなので、チーズが溶けて、全体の水分が飛べばよし。(写真h 参照)