お料理説明・背景
たいてい料理上手なマンマの台所には、分厚い料理本や手製のレシピ集がある。特に手製のレシピ集は、マンマの半生が詰まっているといっても過言ではない。
手書きレシピ派が多いなか、タイプされてファイリングしてあるルチャーナのレシピ集を見たときは驚いた。「シニア向けパソコン講座に参加した時、手書きレシピを全部打ち直したのよ。先生に手伝ってもらってね」とウインクするルチャーナ。しっかり者の彼女らしい。
今日はそのレシピ集からポルペットーネ(ミートローフ)を取りあげる。なんでも息子のお嫁さんから教そわったそう。ほうれん草を巻き込んでいるので、切り口の模様が美しい。おもてなし料理としておすすめだ。
おいしかった料理は、レシピをメモし、アレンジして貪欲に取り込んでいく。料理はこうして伝播するのだろう。
挽肉はイタリアの家庭料理では欠かせない食材。
小麦粉と同様、パン粉や卵を加えて量が増やせる肉料理は、いつの時代も重宝した。挽肉料理と一口に言っても、形成によって、ポルペッティーネ(小さい肉団子)からポルペッテ(ゴルフボール大)、ポルペットーネ(ミートローフ)と語尾が変化し、まったく違った料理に感じるから不思議だ。
そしてつくる人によって微妙にレシピが違う。隠し味にアンチョビペーストを入れたり、詰め物にチーズを加えたりと千差万別。バリエーションは無限と言ってもいい。ここウンブリア州では、茹でたスペルト小麦や羊乳のリコッタを混ぜるレシピもある。
挽肉にもこだわる。イタリアの精肉店やスーパーの肉売り場では、塊肉をその場で挽いてもらう。安価な脂肪で量増しされる心配もなく、鮮度は抜群だ。こうして合挽ミンチの配合を決めたり、2度挽きすることもできる。
「そうは言っても手の混んだ調理が苦手な殿方もいるでしょう。それならサルシッチャ(豚の腸詰め)を買ってきて炭火で焼けばいいんだよ」とルチャーナ。 そうだ、イタリア料理で喜ばれるのが「アッラ・ブラーチェ(炭火焼き)」だ! 炭をおこすなんて、まさに男の料理。来客にも喜ばれる。
「サルシッチャは家庭でつくれるけど、知ってる? 豚の半身を買って来てね…」と豚の解体作業をつぶさに語り出したルチャーナ。おいしい話は尽きることがない。
ウンブリア州在住。製薬会社を退職し渡伊。2005年にマルケ州Itakcookを卒業し、スローフードに関心を持つ。食文化を深める旅の企画&通訳、執筆活動を行う。
作り方
作り方
- たっぷりのお湯を沸かして塩を2つまみ加え、ほうれん草を10分程度茹でる。しんなりしたら、水に取り、絞って拳大に丸める。(写真a 参照)
- 1を刻んで軽く塩をふり、オリーヴオイル大さじ1で和えておく。(写真b 参照)
- パン粉に牛乳を振りかけ、湿らせておく。ミンチ肉に塩4つまみとこしょうをふり、別に卵を割ほぐして、パルミジャーノ、イタリアンパセリ、チャイブ、パン粉とともにミンチ肉に加え、2分ほど手で混ぜる。(1度挽きの場合は、4分ほどこねて粘りを出す)(写真c 参照)
- クッキングペーパーにオリーヴオイル大さじ2をまんべんなく手でのばし、3を3mm程度に薄く広げ、その上に肉よりも一回り小さくほうれん草を薄く広げる。巻き寿司の要領で巻く。(写真d,e,f,g 参照)
- キャンディのように包み、両端はしっかりと巻き込んでおく。(4の時点でお肉がクッキングペーパーにくっつくようであれば、新しくクッキングペーパーを用意する)(写真h 参照)
- 耐熱で底の深めのバット(鍋でも良い)に5を入れ、オリーヴオイル大さじ1とワインを注ぎ、180℃のオーブンで30分加熱する。1度だけ上下を返す。途中、水分が無くなればワインを足す。(写真i 参照)
- オーブンから出して、熱いうちにクッキングベーパーを外し、完全に冷めたら2cm程度に切り分ける。各皿にサーブし、バットに残っている肉汁をかける。(写真j,k 参照)