マンマのレシピ

マンマの紹介

  • ロベルタ・カセッラ(Roberta Casella)さん
  • ウンブリア州スポレート在住
  • 得意料理:手打ちパッパルデッレ特製ソース(トマト、バジル、タマネギ、バター)

お料理説明・背景

初めてロベルタと出会ったのは、共通の友人を通して自宅に呼ばれた時。ここウンブリア州で代表的なパスタ”ストランゴッツィ”を、乾麺ではなく手打ちパスタでもてなしてくれた。若い世代なのに手打ちパスタ!と驚いていたら、「クリスマスはカペレッティ(小さな詰め物パスタ)を従姉妹と一緒に2000個はつくるの」とさらりと言ってのけるほど。

私たちの住むスポレート(人口4万人)は、ウンブリア州で5番目に大きく、ユネスコの世界遺産を有する街。人々は伝統料理を大切にするけれど、料理に手間をかけるマンマは減りつつあり、特にスポレート料理の特色である手打ちパスタや(水からもどす)豆料理は、家庭でだんだんとつくられなくなってきている。

今回紹介するズブリンゴリ・コン・イ・チェーチ(ヒヨコ豆のスープパスタ)は、スポレート料理を1冊にまとめたレシピ集に掲載されているもの。(1980年頃発行;当時の主婦の証言を書き留めた珍しい冊子。わら半紙に刷っていて手作り感満載だった)
なんでもこの冊子は、スポレートの伝説の料理人ジュスティーノ伯父さんの形見なのだとか。 伝説の料理人が伯父さんなんて、彼女の才能は血筋かしら。

「どんな料理なの?」と聞くと、「端的に言うと『パスタ・エ・チェーチ(ヒヨコ豆のスープにパスタを入れたもの)』なんだけど、現在主流の乾燥パスタではなく、生パスタを使うところが違うのよ。今は、ここスポレートで“ズブリンゴリ”なんて言っても、それがパスタのことだと分かる人が少なくなったけれど、当時は普通にあった手打ちパスタの名前なのよね」と説明してくれた。

そもそも“豆+パスタ料理”は、典型的な農民料理であり、一皿でタンパク質と炭水化物が補えるピアット・ウニコ。言うなればプリモピアット Primo Piatto(パスタ、リゾットやスープなど) とセコンドピアットSecondo Piatto(メイン料理)を合体させて一皿に盛った料理だ。
栄養価に優れ腹持ちも良いので、ウンブリアだけでなく中南部イタリアのソウルフードと言える一品。豆はインゲン豆やヒヨコ豆、レンズ豆などが使われる。

そんな重要な料理だからこそ、二十歳で結婚したロベルタは、真っ先にマスターしたのだそう。「私が夫に初めて振る舞ったのが“インゲン豆とパスタ”の一皿なのよ。料理上手な義母ティーナ(次回レシピを乞うご期待)のつくり方をまねて頑張ったわ。その甲斐あって、夫はすごく褒めてくれて・・・・・・とても嬉しかった。子供たちも“インゲン豆とパスタ”が大好物。今日のズブリンゴリ、気に入ってくれるといいなぁ。」と言いながら手際よくつくってくれた。
“豆+パスタ料理”は、彼女の料理の原点なのだ。

今回、料理するにあたって、レシピを忠実に再現しようとし、“ペラレッラ”と呼ばれる当時の手法(暖炉の灰に湯を混ぜて漉し、その液でヒヨコ豆をもどす)を行い、非常に手間をかけてくれた。「だって日本の読者の方が知りたがると思って~」だなんて。サービス精神旺盛で、人を喜ばせるのが得意なロベルタだった。

レポート:粉川妙 (Kokawa Tae)
ウンブリア州在住。製薬会社を退職し渡伊。2005年にマルケ州Itakcookを卒業し、スローフードに関心を持つ。食文化を深める旅の企画&通訳、執筆活動を行う。

★2014年より、1日1組限定B&B、La casa miaを始める。彼女の自宅の離れにある部屋に宿泊ができ、彼女の手づくりの朝食付き。お2人様(ダブルベット)まで宿泊可。 ご興味のある方は、こちらまで↓(日本語でも対応可能)
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材料

パスタ(6人分)

・小麦粉300g薄力粉:強力粉=2:1でもよい
・卵1個
・水100cc
・オリーヴオイル大さじ1
・塩1つまみ

スープ

・乾燥ヒヨコ豆250g戻したものなら500g
・完熟トマト200gトマトピューレ100mlでも可
・ラルド(豚の脂肪の塩漬け)100gなければパンチェッタかベーコン
・タマネギ1個
・塩、こしょう適量
・水または野菜のブロード1.5lまたはコンソメスープの素
・ローズマリー適量飾り用
・オリーヴオイル適量
・暖炉の灰コップ2杯分ペラレッラをする場合。重曹で代用可

作り方

下ごしらえ

  1. 前夜からヒヨコ豆をたっぷりの水に浸してもどしておく。(写真a 参照)
    【ペラレッラの場合(*1)】

作り方

  1. ヒヨコ豆を浸けていた水ごと煮る。やや柔らかくなったら、塩2つまみを入れ、完全に柔らかくなるまで煮る。(写真b 参照)
    【ペラレッラの場合(*2)】
  2. パスタをつくる:麺うち台に小麦粉で山をつくり、中心を拳骨大にくぼませ、卵と水、オリーヴオイル、塩を入れる。フォークで混ぜながら水を少しずつ加え、くぼみを広げながらかき混ぜる。(写真c,d 参照)
  3. あらかた混ざったところで、ざっと全体の粉をまとめて塊にする。水分が多ければ、小麦粉を足し、台の上で5分程こねる。耳たぶよりやや固い状態になったら皿でおおって30分休ませる。(写真e,f 参照)
  4. スープをつくる:鍋に水もしくはブロード(香味野菜+水1.5l)を加熱する。
  5. フライパンに、みじん切りにしたラルドとタマネギを入れ、透明になるまで炒める。(写真g,h 参照)
  6. 5にざく切りにした生のトマトかトマトピューレを加えて、10分程煮る。(写真i 参照)
  7. 4の鍋から香味野菜を引き上げ、6を加える。(写真j 参照)
  8. フタをせずに中火で約30分程度煮込み、ヒヨコ豆を加え、5分煮る。(写真k 参照)
  9. 8の1/3をミキサーなどで撹拌し、鍋に戻す。(写真l 参照)
  10. パスタを伸ばす:やや厚めの2mmに伸ばし、30分そのままにして乾燥させる。(写真m 参照)
  11. パスタの内側を少量の粉ではたき、くるくると巻いて1cmの幅に切る。8~10本ごとに束ね、垂直方向に8mmずつ切る。それをばらすと角切りになる。(写真n.o.p 参照)
  12. 沸騰した9に11を入れる。再び沸騰したら3分加熱し、塩で味を調える。(写真q 参照)
  13. スープ皿に入れ、飾り用のローズマリーとオリーヴオイル、こしょうをかける。(写真r 参照)

ペラレッラの場合

  1. (*1)鍋にガーゼを固定して灰をガーゼに載せる。そこに熱湯2lを注ぎ、漉しながら灰水をつくる。常温になったら、ヒヨコ豆を浸ける。(重曹で代用可)(写真ペルレッラ1,2,3 参照)
  1. (*2)灰水のまま煮て、柔らかくなったらザルにあげる。別の深鍋に塩2つまみを入れた水を沸騰させ、ヒヨコ豆を鍋に入れ、沸騰後数分したらザルにあげる。
  • a. ヒヨコ豆を水に浸してもどす
  • b. ヒヨコ豆を完全に柔らかくなるまで煮る
  • c. 小麦粉に卵、水、オリーヴオイル、塩を入れる
  • d. フォークで水を加えながらかき混ぜる
  • e. 全体の粉をまとめて塊にする
  • f. 皿でおおって30分休ませる
  • g. ラルドをみじん切りにする
  • h. ラルドと玉ねぎを炒める
  • i. トマトかトマトピューレを加える
  • j. スープに6を加える
  • k. ヒヨコ豆を加える
  • l. 1/3をミキサーなどで撹拌し、鍋に戻す
  • m. パスタを伸ばす
  • n. くるくると巻いて1cmの幅に切る
  • o. 垂直方向に8mmずつ切る
  • p. ばらすと角切りになる
  • q. 沸騰後、塩で味を調える
  • r. スープ皿に盛りつける
  • ペラレッラ1. 灰をガーゼに載せる
  • ペラレッラ2. 熱湯を注ぎ、漉しながら灰水をつくる
  • ペラレッラ3. ヒヨコ豆を浸ける

お料理ポイント

パスタの調理時間は、スープがひと煮立ちしたらすぐ(2~3分)よ。 煮すぎないようにね。 Farfalla(ファルファッレ)やTubettini(トゥベッティーニ)などの乾燥ショートパスタでもできるので、その場合はブロードの量を3割ほど増やして、表示時間の3〜5分ほど多く加熱するといいわ。