お料理説明・背景
「今日はナポリの料理をつくるわね」と、アンナマリアが言った。
「私が生まれたのはイストリア半島だけど、戦後、まだ11歳だった私は、家族と一緒にシチリアに渡ったの。私が育ったロヴィニのように海がそばにあるところで、なんだか似てるなって思ったけど、話していることが全然わからなかったわ。特に、習慣や食べるものはまったく違っていたからね。」
「シチリアで初めてスパゲッティを食べたの。イストリアでは、ミネストローネにパスタを入れたり、マケロニと呼んでいたペンネをお肉のソースに絡めて食べたり、いつも短いパスタを食べていて、スパゲッティなどの長いパスタを食べたことがなかったわ。そもそもスパゲッティを売っていなかったのよ。」
そのあと、父方の親戚がナポリにいたため、ナポリへ引っ越しをした。
「ナポリでもみんなおいしそうに魚介のスパゲッティを食べていたのを見て、私の母はナポリ料理を習って、家でつくってくれるようになったの。でも一番抵抗があったのはムール貝。私が生まれたイストリア半島では、ムール貝のことをピドッキ ディ マーレ(海のノミ)と呼んで、だれも食べなかった。ナポリに引っ越してきてから、みんなが食べているのを見て、食べるようになったのよ」とアンナマリア。
彼女は、夫の家族から、ナポリの料理を習ったそうだ。
義母は、いつもこのソースにはリングイーネをあわせていて、「どうしてスパゲッティではないの?」と聞くと、「リングイーネはソースがよく絡まっておいしいからだ」と言ったそうだ。それから、彼女はいつもこのソースにはリングイーネを使っている。
今でも、長いパスタを食べるのが苦手だと話すアンナマリア。「小さい頃、初めてスパゲッティを食べたときには、どうやって食べていいのかわからなくて吸っていたのだけど、口の周りがトマトソースで真っ赤になったのを覚えてるわ。その後も長いパスタを食べるのが難しくて、口の中で舌に巻き付けて食べるようになったのよ」そう言って、彼女はリングイーネを、口の中で舌に巻いて食べて見せた。
でも、やっぱりソースが口の周りについてしまう。それを見て、家族のみんなが「ママだけできる技だけど、なんだか子供みたい」と笑った。
「今では、長いパスタが大好きだけどね」とお茶目に笑いながら、義母直伝のムール貝のリングリーネをつくってくれた。
1995年よりピエモンテ州在住。日本とイタリア、そしてヨーロッパとの架け橋となるべく様々なジャンルのPR活動などに携わる。
作り方
下ごしらえ
- ムール貝をよく洗い、コケがついていたら、ナイフなどで剃り落す。ひげが出ている場合には、それを抜く。 (写真a 参照)
作り方
- 鍋に下ごしらえをしたムール貝を入れ、蓋をして火にかけ、貝を開く。 (写真b 参照)
- 貝が開いたら、半分は殻から中身を外す。半分は殻ごとそのまま残す。
- フライパンにオリーヴオイルとニンニクのみじん切りを入れる。 (写真c 参照)
- ニンニクを少し炒め、色が変わる前に火を止める。
- オイルが少し冷めたら、フルーツトマトの缶詰を入れる。
- 火にかけながらトマトを少しつぶし、イタリアンパセリを入れる。(写真d 参照)
- 塩を少々加える(ムール貝から塩気が出るので、少しにしておく)。お好みでペペロンチーノを加える。
- ムール貝を入れて、そこにムール貝を火にかけた際に出た出汁を加える。 (写真e 参照)
- 鍋にお湯を沸かして、塩を入れ、リングイーネを茹でる。
- リングイーネが茹ったら、ソースが入っているフライパンに加えて混ぜ、出来上がり。 (写真f 参照)