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カラブリア州のワイナリーVo.2 土着品種に魅せられて。カンティーネエリシウム(Cantine Elisium)

カラブリア州のワイナリーをご紹介するシリーズ・第二弾は、コセンツァ市郊外の新しいワイナリー・カンティーネエリシウムです。
第一弾のワイナリーはこちら(

カンティーナエリシウムはDOP・Terra di Cosenza(テッラディコセンツァ)に位置していて、場所はだいたいこの辺り。


コセンツァの裏山・シラ国立公園の入り口付近の空気が大変清涼な地域で、この地域が発祥と言われている土着品種を作っています。
作付面積4.5ヘクタール、年間生産数(最大で)12000本の小さな小さなワイナリーです。


 

土着品種愛が強すぎて、土地を購入→開墾→植樹→ワイン作りを初めてしまったアンドレアとマルコ兄弟。(写真はアンドレア)
「本当はアグリツーリズモ開業の予定だったんだけどワイン作りが楽しくてね・・」と農家仕事が楽しくて仕方がないアンドレア氏。もともとは経済関連の専門家です。


 

訪問した際は、ちょうどブドウの剪定作業が行われていました。

写真ですごい斜面に見えているこちらの畑、ブドウの前に立っているのが辛いぐらいの急斜面です。

この傾斜があるため、特別な水やりが必要なく、谷から吹き上げる風によってカビ病などの発生を防ぐことが出来ているんだとか。

この斜度の為、ブドウの収穫作業はとんでもなく大変。
私は秋に収穫のお手伝いに行くことになっていますが、一緒に収穫体験したい方はどうぞご遠慮なくお問い合わせください。
アンドレアと私が喜びますw


 

清潔に保たれたワイナリーでは、土着品種の

マリオッコ ドルチェ (Magliocco Dolce)
ペコレッロ(Pecorello)

の2種から作られるワインを作っています。
(この他メルローも作付けしていますが、作業を手伝ってくれる農家さんの自家消費用。ボトリングはしていません。)


 

ワインは3種類。白・ロゼ・赤を生産し、今年からリセルバもボトリングが始まる予定です。
全て単一品種のワインなので、白はペコレッロ100%、ロゼと赤はマリオッコ100%。

ブドウの収穫段階から温度・酸素濃度に気を使って作られている芳醇な香りのワインは、小さな新興ワイナリーにあるまじき完成度です(←褒めていますw


 

ペコレッロはそもそもDopコセンツァのサヴート川一帯が原産とされている土着品種。
このサヴートの源流域で作られる、正真正銘のペコレッロを作りたいと言うのがアンドレアの野望。
試飲させて貰った限りでは、もうかなり高いレベルで実現しているように思うんですが。。まだまだ高みを目指したいらしいです。

端的に言って、ココのペコレッロ(白のくせにアルコール度数14%)は試飲の価値があると思いますョ。


 

リセルバの実験もしていて、仏製の樽が並んでいました。今年からボトリングする予定とか。
さらに接ぎ木苗が一般的になっているブドウ栽培を実生苗で育てる実験をしていたり、数年先も楽しみなワイナリーです。


 

試飲スペース脇のパノラマテラスからの眺め。広大なコセンツァの平原が広がります。
写真の奥が西。夕日を眺めながらゆっくり乾杯したいなぁ。。

試飲スペースは小さなトラットリアの様でつい長居しがち。
私は訪問するたびに白・ロゼを中心に爆買いをしてしまう、お勧めワイナリーさんです。

 

Cantine Elisium di Fratelli Andrea e Marco Caputo/カンティーネエリシウム(
Contrada Serre, 8, 87100 Cosenza CS
※少し不便な場所ですが、グーグルさんにお任せで問題なく到着できます。コセンツァ市から車で20分くらい。

アジアーゴ高原のマルガにて

アジアーゴ高原は、ヴェネト州のヴィツェンツァ県と、お隣のアルト・アディジェ州トレント県との境に位置する地域。ドロミーテ山麓の始まりで、平地からも比較的気軽に訪れることのできる自然豊かな地区にて、夏場は避暑地として多くの人がバカンスで訪れる場所。冬場はもちろんスキー目当ての客が足を運ぶ場所だ。

アジアーゴと呼ばれる地域内はアルトピアーニ・デイ・アジアーゴ(Altopiano di Asiago)と呼ばれる標高約1000m級の丘陵地をさす。同地区内、緑豊かな高原が連なる広大な地域。軽いハイキングから、リフュージョと言われる山小屋やマルガと呼ばれる牛の放牧場とチーズ製造所等があり、食事などを楽しむ場所であるため、バカンスシーズンはどこも人でいっぱいだ。

そんなマルガのうちのひとつ、今でもかなりアナログな感じでのチーズ作りがされている、カゼイフィーチョ(チーズの製造所)を訪れた。
そう、ここはヴェネトを代表するD.O.P.の認定もあるアジアーゴチーズのオリジナル産地でもある。

スパッチョと呼ばれる売り場に入ると、種類は少ないにしろ、ここで作られるチーズとサラミなどが置かれていて、なかなかいい感じ。売り場脇にある製造現場を覗かせてもらった。
今やほぼ他では皆無に等しい、薪で炊くカルダイア(乳を温める鍋)。ガスなんか使うよりもこの周辺にある木々を使って、経済的にもまたエコ的にも優れているから当然!とご主人は話す。長年の経験での火加減の調節だから、ガスよりも、実際に燃え具合を目で見ながら火力調節、温度調節ができる自然の炎のほうが、彼にとっては簡単なのだそうだ。そして、チーズの熟成室。D.O.P.の認証を得るには、もはや衛生的には検査に通らない木枠。なんともいい味わい。だから、もちろんここのチーズはD.O.P.の認証はない。熟成室の外にはここでできるリコッタを燻製する燻製機が。ちょっと傾いた感じでいるところがこれも味わいのある風景。この時も燻製作業中だ。

ここでチーズが作られるのは、牛の放牧期間である5月から9月いっぱいくらいまで。そのため、フレッシュ、及び熟成期間の短いチーズの販売はこの期間のみ。その後は熟成タイプのもののみが彼らの手元に残る。
そして、10月に入ると、気温がぐっと下がり悪天候も続くため、牛はもっと平野部に近い牛舎へと運ばれる。チーズの美味しさはその原料となる乳に由来するものだから、こんな大自然のなかでのびのびと過ごしている乳牛からとれる乳は美味しく、風味の豊かさが格段によい。見た目も黄色味が非常に強いものとなる。

この高原でつくられる特別に旨いチーズはこの期間限定の搾乳したものからのみ。なかなかとお目にかかれない希少な味わいのチーズだ。

ここで売られている美味しそうなサラミを横目で見つつ…彼らの飼育小屋の豚さん達にも別れを告げた。

レモン&レモン ソレント~アマルフィ海岸の春

収穫期は2~4月ごろ

皆さま~とってもお久しぶりです~

暖かい初夏のような日が続きましたが、気温が一気に急降下。またしても裏切られた感がありますが、
これが三月のイタリア、Marzo Pazzoです。
季節はあっという間に過ぎゆき、春先はレモンの季節です。
いま、ソレントやアマルフィに行けば、間違いなくレモンがたわわに実っている事でしょう。

アマルフィとソレントのレモンはIGP称号をもつ伝統的な地域性の高い農作物で、カンパーニア州では昔から大切に育てられてきました。
イタリアでIGP称号のレモンのは全部で6か所ですが、中でもいち早く認定されてきたのがカンパーニア。
頭に降ってきそうなレモン

はじめて鈴なりのレモンを見たときは興奮しました。
「うわぁ、レモンが降ってきそう」
そしてレモンのプリントや、レモン柄の陶器をついつい集め始め…
レモンのお菓子やレモンのお料理などへ発展し、今に至ります。レモン大好き!

まぁ、南イタリアのお庭もちのご家庭なら、必ずオレンジとレモンの樹は植えてあると思います。それくらいポピュラーで、それほど栽培が難しいというわけではないのですが、強風や雹、霜に弱いので、伝統的な栽培の場合冬場は黒い布で覆ったりします。ソレントの伝統的な栽培農家だと、いまはもう少なくなりましたが、にPaglia(藁)の蓋をして、完全にふさいでいます。

私がよく行くソレントのレモン農家のアグリトゥーリズモはオーガニックで栽培しています。近年、害虫もどんどん変容して、「無農薬でのレモン栽培をなんどもあきらめようかと思った、その度に家族みんなで泣きながら耐えてきた」と話してくれらオーナーのジュゼッペの表情を思い出します。温暖化で農作物の収穫は、全く読めない時代、農家の人は本当に苦労しています。

ソレントの街角

そんなレモンのニーズとしては、主にリモンチェッロ。この美しい食後酒には、レモンの皮が必要です。人の口に入るものですので、無農薬でなくてはなりません。といってもレモンの皮を食べるわけではなく、レモンの皮を使って色を抽出します。そう、皮だけが必要なんです。

じゃ実はどうするのか?といえば、主な使用法としてはジャムですね。
ただレモンはもともとあくの強い果実ですので、普通のジャムづくりのようには行きません。最低でも二度ほど熱湯であく抜きしてから煮込まないと、本来の黄色ではなく、真っ黒なジャムになってしまいます。なかなか大変な作業です。

フレッシュクリームが美味しい

そしてお菓子はソレント生まれ、アマルフィ海岸を代表するデリッツィア・アル・リモーネ!
見かけによらず、爽やかなケーキで二個は行けます。特に出来立てでクリームが緩いときが最高。
食事はレモンのパスタやリゾットがあります。料理はレストランで出されるものよりシンプルで本来のレモンのパンチ力が強い、
家庭料理のほうが好きです。

バッサーノ産白アスパラDOP

ヴェネト州にはアスパラ生産で有名な産地がいくつかある。そのなかでも筆頭にあげられるのが、バッサーノ産のそれだ。

フォルムの美しさは品質保証にもつながるもの

産地は、ヴィチェンツァ県バッサーノ・デル・グラッパを中心とした15自治体が該当する。地区が限定されるのは、勿論のこと、産地呼称であるD.O.P. (Denominazione Origine Protetta) に認定されているから。その生産地区は、ドロミーテ山麓を背した地区。この自然環境のもと、山から吹き降ろす風、空気の流れがよく、寒暖の差が激しいこと、また、ここ一帯を縦断するブレンタ川の流れがもたらす、砂や小さな石などを基盤にした土壌が上質のアスパラ栽培には非常に適しているといわれている。



バッサーノのシンボル。アルピーニ橋。アルト・アディジェから流れるブレンタ川に架かる


自然の恵みがもたらす産物とはいえ、そこに人の手がかかることにより、その生産物がひとつのブランドとして確立する。

アスパラは畑に苗を植えることにより、その先10年は生産を続ける。商品として出荷されるのは、3年以降の苗とされ、寒く長い冬が終わるころ、土表に出ている伸びた茎を一斉に刈る。そして、苗の脇を列をつくるように苗上部に土を盛り、畝を形成する。その上に黒いビニールを被せて春を待つ。

季節が以降し、気温があがってくると、アスパラは土の中でその温度を感知し、上方に向けて伸びてくる。アスパラがスクスクと真っ直ぐに伸びるためには、硬い泥状の土よりも、軽い土壌のほうが健やかに育ちやすい、というのが、同地区の土壌に適している所以でもある。

また、黒いビニールを被せる目的は、日光を遮断するため、雨から穂先を守るため、そして保温が目的である。バッサーノのアスパラはDOPとして認証されるものは白のみ。アスパラは土表に出る際に日光をあてることにより、着色してしまうため、とにかく光を遮断することが非常に大切な要因だ。

毎年の気候にもよるが、3月に入るとアスパラの収穫が始まる。朝のできるだけ早い時間、つまりは前述のように、光にあてないことを目的とし、朝日が昇りきる頃には作業は終えていなければならないので、必然的に早朝から収穫がスタートする。

アスパラ収穫は毎早朝からスタート。一本一本を人の手により掘り起こされる


まずは、被せてある黒いビニールシートをはずし、土表にちょこっと顔を出している穂先を見つけては、その地中深くに専用の鉄製のコテを斜めから入れて掘り起こす。そして次に出てくるアスパラのために、専用の木製のヘラのようなもので土の表面を綺麗に戻す。

ひとつの列を端から順番に歩いて収穫タイミングのよいものを掘り起こし終えたら、ビニールシートを再度被せ、次の畝へ…非常に単純ではあるが、この作業が5月いっぱいくらいまで毎朝続く。

収穫したら即座に水に浸す。アスパラは劣化が早いので、常に新鮮さを保つ気遣いが必要


ちなみにバッサーノ産白アスパラDOPにて指定される収穫時期は3月18日のサン・ジュセッペから6月13日のサンタントニオの日まで。ただし、近年は気候の変化もあり,収穫はほぼ5月で終えてしまうらしい。

収穫したものは、作業場に運ばれて水で洗い、太さを合わせて束にする。通常、形態としては1㎏の束をつくるため、それ専用の束をつくる道具が存在する。

輪の中にアスパラを綺麗に並べ、それを柳の若枝で結ぶ。長さを揃えて切り、これで完成。長さや太さ、束の大きさや形、全てに対してここならではの決まりがあり、それに従って各生産農家にて出荷作業が行われる。

アスパラの形状を見ながら丁寧に束をつくる


その日に収穫したものは、作業場で束を完成したらすぐに最寄りの集積所に持ち込まれる。

ここでは、形や色、長さや重量、そして見た目をコントロール。これに合格したものは、ここで初めて、バッサーノ産白アスパラDOPとして認められ、おなじみのタグをつけられる。タグには、生産者の名前を入れてあるので、各束すべてが誰が生産したものかが判断できるようになっている。

集積所にて、品質チェック


そしてここからイタリア国内および国外へ出荷されることとなる。

DOPとして認めらる条件としては、
-とにかく美しい白色であること
-真っ直ぐに伸びていること
-長さ18-22cmであること
-直径最低11mmであること
-全体が丸く美しいカーブを帯びていること
-密がしっかりとしていること
-柔らかく、筋ばっていないこと
-新鮮でアスパラならではの香りを保っていること
-1束は約1.5kgの重量であること
-形が均等であること
-束は柳の若枝でしばってあること
-生産者は組合に登録してあり、生産基準に従った生産がなされていること
等となっている。

バッサーノ産の食べ方として有名なのは、茹でたアスパラにゆで卵を添えること。地元の有名なレストランなどでは、注文すると、まず最初に熱々の茹でたてゆで卵が殻ごと運ばれてくる。これを各自で殻をむき、皿の上でナイフとフォークを使って細かくする。そこに塩、胡椒、オイル、好みでアチェートを加えて自分でソースを準備する。

そうこうしているうちに茹でたてのアスパラがその皿の上にごそっと盛られるので、予め準備したソースをつけていただく…というのが正当派。「白アスパラのバッサーノ風」というメニューはこれにあたる。

最もクラッシックな食べ方。バッサーノ風


春の非常に短い時期に楽しむ旬の賜物。季節となると生産各地では、土地の人々がこの産物の収穫の喜びを分かち合うサグラ(収穫祭)が開催されている。