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フリウリの土着品種オリーブオイル「ビアンケーラ」

イタリア国内で生産されるオリーブの産地としては、少々意外かもしれない。イタリア最北西に位置するフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州の土着品種として、ごく僅かではあるが生産される品種がある。それが「ビアンケーラ(Bianchera)」だ。

ウーディネからトリエステ方面を中心に、クロアチアのイストリア及びダルマチア地方にて生産される。
この地の冬の厳しい寒さに耐えるがゆえ、頑丈なたくましさを持つ品種でもある。太い幹にしんなりと長い枝をつけるが、その生命力の強さからか、剪定をしっかりしてあげないと、上方まで高く高く枝を伸ばしすぎてしまうこともある。

地域的には、トリエステで有名な突風ともいえる「ボーラ」の影響を受ける土地だ。このしなやかな枝を備えたオリーブの樹の並ぶオリーブ畑は、植わっている樹が全体的に風のふく方向に傾いている、という光景を目にすることもある。

イタリア北部のこの環境だからこその生産物


「ビアンケーラ」という品種の名の通り、「白い」という意味合いを含んでいるが、その理由は実の表面に白い小さな斑点が見られることから。小さめで密な実をつける、このたくましい品種は、オープンではないが内に秘める強さを持つ、この地方の住人の気質を表しているかのようでもある。

2018年はオリーブも当たり年!たくさん実をつけました


収穫は全体的に遅めであり、通常は10月中旬以降から。収穫のタイミングとしては、樹全体になる実の色の変化がひとつの目安。オリーブの実は緑からだんだんに熟して黒くなっていくが、それらが一本の樹に半々になりかける頃合いを見計らう。フレッシュ感と完熟感の、それぞれの良さを逃さないようにするためだ。

現在最も新しいオイルである2018年産のものは、実の生育期に気温が高く日照時間も多くあったために少し早めの収穫時期を迎え、品質、量ともに非常に良い年であった。

収穫作業には、一本一本の木の下に大きな大きな網のシートを敷くことからスタート。樹の両脇を2枚のシートを重なるように並べ、一粒の実も取りこぼさないように注意する。そして、電動の熊手を用い、それを上下に揺らしながら実をシート上に落としていく。一本の樹が終わると、そのシートを次の樹の下へとひっぱって移動し、作業続行。シートに落ちた実が溜まり、その重さのために、移動するのが困難なくらいになったら、その集めた実を都度大きな容器に移す。

摘みたてのビアンケーラ。愛おしい‼︎


収穫は、一粒一粒を丁寧に無駄なく摘み取るように注意する


それを収穫後すぐに搾油所に運び、搾油作業へ。収穫した実はその時点から酸化が始まるため、即日搾油はよいオイルの必須要素だ。

搾油したばかりのオイルの香りは、びっくりするほどの芳醇さ。いわゆるオリーブジュースだ。これをこのまま静置しておくと不純物が底に溜まってくる。オイル全体にもそれを残しておくと酸化の原因にもつながるため、一定期間の静置後はフィルターにかけ、その後に瓶詰め作業となる。

絞った直後のオイル。香りがすごい。この場で見ているだけでバケット1本食べられる


フィルターにかける作業中


できあがったオイルの特徴は、とにかく品種的にポリフェノール含有量が高いことから、苦味と辛味を十分に感じる決然とした味わいだ。うまくできたこのオイルの清らかできっぱりとした強い風味は、格別なものといえる。

パンに絞りたてのオイルを浸るほどかけて食べる…このうえない幸せ


使い方としては、生野菜のサラダに…というよりも、焼いた肉や魚の調味料として。温かいミネストラの仕上げに加えれば最高の調味料に。そして、シンプルなトマトソースのパスタの仕上げにスッと一筋加えることでその一皿は一段と味わい豊かに。また、全粒粉などのクセのあるパスタとこのオイルとの相性は非常によい。

シンプルなミネストラにこのオイルを一筋かけて…格別な一皿


とにかく一度お試しいただきたい希少価値のあるオイルだ。

 

フリウリの山間にて味わう最高の「Cjarsòns(キャルソンス)」

イタリアの最北西、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州を代表する料理の筆頭となる、この料理。名前もなんだかイタリア語なのかどうか…と疑問に思うようだが、この地は古くから時代を追って多くの民族の侵入があり、また、オーストリアとスロヴェニアを国境を持つ地域として、現在でも非常に独自の文化を持つ特異な州といえる。州名の「フリウリ」はウーディネ方面を、「ヴェネツィア・ジュリア」地域はトリエステ方面の総称となり、イタリア国内にはよくある話ではあるが、お互いにその文化を共有することは彼ら自身が否定するところだ。

そして、さらにこれらとは、またまた一線を画する地域が同州内「カルニア」地区。オーストリア国境に面する山間の地区。ここには、さらに独特の文化が根付いており、食文化も非常に特徴あるものだが、同時にこの地区の料理が同州ならではの郷土料理として知られる例も多い。

そのひとつが「Cjarsòns(キャルソンス)」だ。


もともとフリウリ地方には、「訛り」とはまた違う独自言語ともいえる「フリウリ語」というのが存在する。「フリウリ語-イタリア語」辞典も本屋に普通に並ぶくらいだ。
同料理名「Cjarsòns」もなかなか発音が難しいものではあるが、その料理名の由来を聞いてみると…。
よく言われるのは、詰め物をしたピッツァの「Calzone(カルツォーネ)」や、小物などを入れてしまっておく引き出しを意味する「Casetteriera(カセッテッリエラ)」など。いずれも詰め物をした料理というところからくるようだが、実はそうでもないらしい。または、カルニア地方を意味する「Cjarnion(チャルニオン/キャルニオン)」から派生する、等…。この地方の料理をよく知る長老的人物に話を聞いても、どれもこれも真相ではない、という。

そして、もちろん土地料理ならでは。各人、各家庭の伝統の味、手法があり、それぞれに受け継がれてきたものであるから、ひとつのレシピとしてこの料理が収まることはまず、ない。

私個人として、いくつかのキャルソンスを食べてきたが、信頼できる一皿を見つけた。それを作ってくれるのが、同地区、Forni Avoltri(フォルニ・アヴォルトリ)にて、ホテルとレストランを経営するマンマであり、シェフである、Tiziana Romanin(ティツィアーナ・ロマニン)さんだ。

オーナーシェフのティツィアーナさん。厨房での右腕、ジョヴァンニさんと。


1908年にこの地でオステリアを開いてから100年以上も続く家系。一人娘であったティツィアーナさんは、やはり現在の彼女のように、この店を引っ張ってきた彼女のお母さんからその全てを受け継いできた。

緑に囲まれたホテル・レストラン


大きな窓からみえる景色を見ながら食事を


この地では、野菜も肉類も、もともとは現地調達。野菜は建物横にある畑から、食用とする肉は信頼のできる知り合いの農家から、ジビエの季節には必ず土地のものをハンターから…それらの素材を大切に、自然への礼を込めて丁寧に、且つ正確に扱う技法・技術、そしてお客様へのホスピタリティ等々、ホテル及びレストラン経営を続けていくうえに大切なスピリットを全て譲り受けた、と自覚している。

最愛のお母さんとの写真。店内に飾ってある。


主要都市からはかなり離れた場所にあるが、夏や冬のバカンスシーズンはもちろん、その季節以外でも、よくもこんなところに…と思うほど、常に多くの客で店が埋まる。土地柄、たまたま寄った、という感じの客は皆無であり、ほぼ全ての来客はここを、そして彼女を知って訪れる。

周囲の景色も自然いっぱいで美しい


前置きばかりが長くなったが、肝心のこの料理とは…。

同料理はいわゆる詰め物パスタ。ただし、中身を包む生地はニョッキのようにジャガイモが入る(もちろん入らない例もある)。
中身はこれも一様ではないのだが、甘い素材を加えていわゆるアグロドルチェな仕上がりにする場合もあるし、リコッタや野草などでサラートに仕上げる場合もある。

ティツィアーナさんのものは、生地にできる限り多くのジャガイモを入れ、口当たりをふんわりと仕上げてあるのがその特徴。
中身には、リコッタ、アマレッティ、干ブドウなどが入り、そこに欠かせないのがたっぷりと感じるシナモン。
中身の材料をこれもふんわりと仕上がるように混ぜ、それをジャガイモ入りの厚みのある生地で包む。包まれたひとつひとつは茹でて皿の上へ。そこに熱いバターをさっとかけ、さらにシナモンを添える。そして、仕上がりには削りおろした燻製のリコッタチーズが必須だ。

風味と食感が様々に融合する一皿


この甘さのある料理の所以は一時代、領地下におかれていたオーストリアからの影響、そして香辛料をたっぷりと使うのは、その前時代にこの地を支配したヴェネツィアの影響を受ける。
独特の食感と甘さ、そこに塩味や燻製香が混じり合い、さらにしっかりと感じるスパイシーなシナモンの風味。なんとも不思議な風味が一体化している。
いろいろな味や食感が融合して仕上がるこの皿は、まるでこの地に息づく異文化の融合と重なるようでもある。

これも土地のポレンタ料理「Tocj in Branda(トーチ・イン・ブランダ)」


Albergo Ristorante “Al Sole” di Romanin Tiziana

Via Belluno, 14 33020 Forni Avoltri (UD)

Tel: +39.0433.72012

http://www.alsoleromanin.it

フリウリの燻製生ハム「プロシュット・ディ・サウリス I.G.P.」

サウリス産プロシュットI.G.P. (Prosciutto di Sauris I.G.P.) は、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリアの北部、峡谷ともいえるサウリス村でつくられる希少なプロシュットだ。標高1200mに位置する稀有な場所で製造されており、原産地呼称のI.G.P.認定とはいえ、その生産者はたったの2社のみ。

標高1200mの自然に囲まれた地域にてこのプロシュットが生まれる


土地的な歴史から、長くドイツの文化の影響を受け、また長く厳しい冬を越さなければならない故から生まれた、世紀を超えたこの土地ならではの生産物といえる。

さて、この土地に行き着くまでには、結構な山道をクネクネと車で登っていく必要がある。途中、岩を切り出しただけのようなトンネルをいくつか抜けると…

目の覚めるようなエメラルドグリーンの大きなサウリス湖に出る。

サウリス村の入り口、サウリス湖。水面の色が非常に特殊‼︎


これは、戦時中にドイツ軍により捕虜となったニュージーランド人たちの現場での働きによりできあがったものだとか。
どこまでも奥へ奥へと続く峡谷のような風景と、深さを感じるブルー/グリーン、そしてその歴史を考えながら水面を見ていると、まるで吸い込まれるのではないか、という錯覚に陥るようだ。

ここで1862年創業のプロシュットフィーチョ「WOLF (ヴォルフ)」を訪ねる。会社名の「WOLF」は創業家族の屋号。人口約400人ほどの小さなこの村は、そのほぼ全ての家が「Petris (ペトリス)」という苗字を持つ。そのため、お互いを区別するために屋号を用いるのが常となっている。

Wolf社外観


原料となる豚は、北イタリアを中心として飼育されたものを使用する。腿肉の形となって納品される肉には、塩、胡椒、ニンニクがすりこまれ、数日間置いたのち、塩をはずし、温度と湿度のコントロールされた保管庫にてしばらくおかれる。

その後、サウリス産プロシュット独特の工程である「アッフミカトゥーラ」に入る。いわゆる燻製だ。
燻製に使われる木はブナと決められているが、ブナの燻煙は適度に柔らかく、甘みを帯びるほど良さを持ちあわせているので、同製品に適する唯一の木材とされている。

ひんやりとした燻製室。室内にほのかな煙が充満している。


サウリスのハム類の特色をつくるブナの木の炊き場にて。同社を支えるクリスティアンさん


同社の燻製室は肉の保管・熟成庫のある階下に位置し、ここに並ぶいくつかの炊き場からあがる煙は直接燻製室へつながっている。
煙が直接つながる上階の燻製室は低温庫となっているため、燻製はいわゆる冷燻となる。燻製期間は3日間。ここでほどよい燻製臭が肉にまわり、独特の風味を生みだすこととなる。

製品として出荷可能な状態。見ているだけでどことなく燻製香がしてきそうだ


その後は熟成室へ。ここでゆっくりゆっくりと熟成が進み、14ヶ月に達した際に品質がコントロールされる。合格したものは、焼印が押され、ようやく「プロシュット・ディ・サウリスI.G.P.」として認められ、市場に出荷できる態勢となる。

I.G.P.の認定の焼印がされるのは、14ヶ月経過時に検査に合格したもののみ


このプロシュットの味わいの特徴としては、旨みや甘みがほどよく、脂が全体にうまくのっていること。ナッツのような脂と旨みが相互する非常にまろやかさが他地でのプロシュットと一線を画す。薄くスライスしていただくそれは、もちろん食する部位にもよるが、下に残るほどよい塩気は、なんとも北の山奥でつくられる力強さを感じさせる。
そして、これには、しっかりとした味わいを持つ土着品種のフリウラーノを合わせたいところだ。

スライスしたプロシュット。奥はこれも同社の看板商品、スペック。


出荷の際には同社のブランドがかけられる。


同社では、特に18ヶ月熟成に達したものを、「ノンノ・ベッピ」として、ラインナップしている。その熟成した旨みをさらに特徴としたものも同社自慢の一品だ。
そして、同様に同社の看板製品でもあるスペックも合わせて味わうべきもの。

同社売店にて。その場でスライスもしてもらえる。


Prosciuttificio Wolf Sauris
住所 Sauris di Sotto, 88-33020 Sauris (UD)
電話 Tel: +39.0433.86054
HP http://www.wolfsauris.it