マンマのレシピ掲載「カスタニャッチョ」に欠かせない”栗の粉”について、栗生産者に聞きました
「マンマのレシピ」で11月5日に掲載のカスタニャッチョ。可愛らしい響きのお菓子ですが、どんなお菓子かご存知ですか?栗の粉を使った焼き菓子で、トスカーナの秋のお菓子の代表格です。砂糖は使わない、かなり甘さ控えめなお菓子で、トスカーナの甘いワインのヴィン・サントと相性抜群です。作り方は、「マンマのレシピ」取材で弾ける笑顔を見せてくれたジュゼッピーナさんのレシピを是非ご覧になってください。
その取材の中で、イタリア好きの担当者から以下のような質問がありました。
「栗粉は通常10月~12月にならないと出回らないとのことでしたが、今回はどのように入手いただけたのか、少し教えて頂いてもいいでしょうか?また、やはり栗粉は通常、栗の収穫後、その年のものを使って新粉?的な感じで10月頃から販売され、その年のものはその年に売り切れ市場から消えていくのでしょうか?とてもニーズがあるものか・・意外な情報でしたので教えて下さい。また、栗の粉を他にどういった料理に使われますか?」
読者の皆様も気になる内容かと思いますので、今回はそんな栗や栗の粉事情について説明したいと思います。ちょうどカスタニャッチョのレシピ取材を終えたばかりのタイミングで、トスカーナの栗の生産者にお話を聞く機会もあったので、あわせてお伝えします。
今回のカスタニャッチョのレシピ取材依頼がイタリア好きからあったのは9月はじめのタイミング。周りのマンマたちに「カスタニャッチョのレシピ取材させてくれる?」と聞きまわったところ、「何を寝ぼけたことを言ってるのよ!まだ早いわよ。栗の粉(イタリア語ではfarina di cantagne=ファリーナ・ディ・カスターニェといいます)は9月になんか無いわよ。あっても、去年の栗からできた古いものだから美味しくないわよ。10月まで待ちなさい!」と、聞いたマンマ全員が口を揃えてそう言いました。
確かにトスカーナの店頭でカスタニャッチョが並ぶのは10月に入ってからというのは知っていましたが、栗の粉については、てっきり小麦粉と同じような感覚でいつでも手に入るものかとばかり思っていました。実際、9月に大きめのスーパーで栗の粉を探しても見つからず、スーパーの店員に念の為に「栗の粉ってありますか?」と聞くと、この人わかってないわね・・という表情でNoと即答されてしまいました。
しかし10月に入ると、途端に栗の販売とともにどこのスーパーでも栗の粉が売り出されるようになり、「うわあ、栗の粉って本当に”旬のもの”なんだ!」と実感しました。賞味期限を見ると2022年4月30日とあるので、半年くらいが賞味期限のようです。小麦粉は半永久的にOKのようなイメージを持っていたので、栗の粉の賞味期限がわりと短いのも意外でした。
さて、そんな賞味期限や栗の粉について他にはどんな使いみちがあるのか気になっていたところ、ちょうどいいタイミングで栗の生産者たちに話を聞く機会がありました。
トスカーナ州が主催でシエナで開催された「BuyFood Toscana」というトスカーナのDOPやIGP認証の数多くの名産品を紹介してB2Bを促進させるイベントに招待され、その一環として開かれたマスタークラス(生産者の解説つきの試食会)に参加。そこに栗の生産者がいたので色々質問させてもらいました。
BuyFood ToscanaのHP: https://www.buyfoodtoscana.it/
紹介された栗はトスカーナ州のムジェッロの栗(Marrone del Mugello=マッローネ・デル・ムジェッロ)で、この栗はIGP(保護指定地域表示)の認定を受けていますが、この品質証明とも言える認定を受けるには厳しいルールに従う必要があります。例えば、合成肥料や農薬の投与は禁止、1ヘクタールあたり80本未満の密度、栗のサイズは1キロあたり80粒以下である必要があるなど。日本でいうところの「夕張メロン」のようにステータスのある栗なのです。
Marrone del MugelloのHP: http://www.marronedelmugello.it/
マスタークラスではムジェッロの栗を使った「カスタニャッチョ」と「カスタニャッチョ風アイス」の試食が行われました。カスタニャッチョはもちろん、カスタニャッチョ風アイスは初めて食べましたがカスタニャッチョ風味そのものでとても美味しく、参加者たちも絶賛していました。
ムジェッロの栗の生産者に冒頭の質問をしたところ、こんな回答がありました。「栗の粉は、収穫してからその年の栗を使って作ります。なので、栗の粉が市場に出回るようになるのは栗の収穫後になります。ムジェッロの栗の粉は、IGP規格に達しない小粒のものなどを使って作られます。栗の粉は実際には半年以上でも食べることはできますが、半年経過した頃から風味が落ちます。なので、美味しく食べるには賞味期限内に食べることをおすすめします。」
栗の粉はイタリア市場において一般的に500グラムで5ユーロほどとなかなか高価なので、一般家庭でそれほどニーズが高いわけではありませんが、トスカーナでは「カスタニャッチョ」や「ネッチ」で呼ばれる栗のクレープ、栗の粉でつくった「ポレンタ」などに使われることが多く、他にも「クロスタータ」や「マフィン」などに利用されることもあります。生産者の話によりますと、「最近ではグルメ食材として注目され、栗の粉を練り込んだタリアテッレなどのパスタや、リゾットに加えるレストランなどもあるみたいですよ」とのことでした。
さて、そんな栗の粉のイタリア事情を学んだ後は、是非マンマのレシピの「カスタニャッチョ」にも挑戦してみてください。
ところで、今回のマスタークラスは実はトスカーナ州主催のプレスツアーの一部でした。トスカーナ州の美味しいご当地グルメを食べ歩きする2泊3日のツアーに招待されて、日本ではまだ馴染みのない美味しいものをたくさん食べ、素敵な生産者の方々を訪問してきました。
①トスカーナ州から招待!ご当地グルメの”食い倒れ”プレスツアーに参加しました<第一回>
②アザミやアーティチョークの花で固めてつくる、ヴォルテッラのペコリーノ/トスカーナ州主催プレスツアー<第二回>
③大理石の器で熟成される、真っ白な「コロンナータ村のラルド」口の中でトロける絶品/トスカーナ州主催プレスツアー<第三回>
そんなツアーの様子を3回に分けてリポートした記事もあわせてどうぞ。上記のタイトル(青色)をクリックすれば記事をご覧いただけます。
《WEBマガジン イタリアマンマのレシピ》
★栗粉の焼き菓子 カスタニャッチョ
https://italiazuki.com/?p=46831
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その取材の中で、イタリア好きの担当者から以下のような質問がありました。
「栗粉は通常10月~12月にならないと出回らないとのことでしたが、今回はどのように入手いただけたのか、少し教えて頂いてもいいでしょうか?また、やはり栗粉は通常、栗の収穫後、その年のものを使って新粉?的な感じで10月頃から販売され、その年のものはその年に売り切れ市場から消えていくのでしょうか?とてもニーズがあるものか・・意外な情報でしたので教えて下さい。また、栗の粉を他にどういった料理に使われますか?」
読者の皆様も気になる内容かと思いますので、今回はそんな栗や栗の粉事情について説明したいと思います。ちょうどカスタニャッチョのレシピ取材を終えたばかりのタイミングで、トスカーナの栗の生産者にお話を聞く機会もあったので、あわせてお伝えします。
今回のカスタニャッチョのレシピ取材依頼がイタリア好きからあったのは9月はじめのタイミング。周りのマンマたちに「カスタニャッチョのレシピ取材させてくれる?」と聞きまわったところ、「何を寝ぼけたことを言ってるのよ!まだ早いわよ。栗の粉(イタリア語ではfarina di cantagne=ファリーナ・ディ・カスターニェといいます)は9月になんか無いわよ。あっても、去年の栗からできた古いものだから美味しくないわよ。10月まで待ちなさい!」と、聞いたマンマ全員が口を揃えてそう言いました。
確かにトスカーナの店頭でカスタニャッチョが並ぶのは10月に入ってからというのは知っていましたが、栗の粉については、てっきり小麦粉と同じような感覚でいつでも手に入るものかとばかり思っていました。実際、9月に大きめのスーパーで栗の粉を探しても見つからず、スーパーの店員に念の為に「栗の粉ってありますか?」と聞くと、この人わかってないわね・・という表情でNoと即答されてしまいました。
しかし10月に入ると、途端に栗の販売とともにどこのスーパーでも栗の粉が売り出されるようになり、「うわあ、栗の粉って本当に”旬のもの”なんだ!」と実感しました。賞味期限を見ると2022年4月30日とあるので、半年くらいが賞味期限のようです。小麦粉は半永久的にOKのようなイメージを持っていたので、栗の粉の賞味期限がわりと短いのも意外でした。
さて、そんな賞味期限や栗の粉について他にはどんな使いみちがあるのか気になっていたところ、ちょうどいいタイミングで栗の生産者たちに話を聞く機会がありました。
トスカーナ州が主催でシエナで開催された「BuyFood Toscana」というトスカーナのDOPやIGP認証の数多くの名産品を紹介してB2Bを促進させるイベントに招待され、その一環として開かれたマスタークラス(生産者の解説つきの試食会)に参加。そこに栗の生産者がいたので色々質問させてもらいました。
BuyFood ToscanaのHP: https://www.buyfoodtoscana.it/
紹介された栗はトスカーナ州のムジェッロの栗(Marrone del Mugello=マッローネ・デル・ムジェッロ)で、この栗はIGP(保護指定地域表示)の認定を受けていますが、この品質証明とも言える認定を受けるには厳しいルールに従う必要があります。例えば、合成肥料や農薬の投与は禁止、1ヘクタールあたり80本未満の密度、栗のサイズは1キロあたり80粒以下である必要があるなど。日本でいうところの「夕張メロン」のようにステータスのある栗なのです。
Marrone del MugelloのHP: http://www.marronedelmugello.it/
マスタークラスではムジェッロの栗を使った「カスタニャッチョ」と「カスタニャッチョ風アイス」の試食が行われました。カスタニャッチョはもちろん、カスタニャッチョ風アイスは初めて食べましたがカスタニャッチョ風味そのものでとても美味しく、参加者たちも絶賛していました。
ムジェッロの栗の生産者に冒頭の質問をしたところ、こんな回答がありました。「栗の粉は、収穫してからその年の栗を使って作ります。なので、栗の粉が市場に出回るようになるのは栗の収穫後になります。ムジェッロの栗の粉は、IGP規格に達しない小粒のものなどを使って作られます。栗の粉は実際には半年以上でも食べることはできますが、半年経過した頃から風味が落ちます。なので、美味しく食べるには賞味期限内に食べることをおすすめします。」
栗の粉はイタリア市場において一般的に500グラムで5ユーロほどとなかなか高価なので、一般家庭でそれほどニーズが高いわけではありませんが、トスカーナでは「カスタニャッチョ」や「ネッチ」で呼ばれる栗のクレープ、栗の粉でつくった「ポレンタ」などに使われることが多く、他にも「クロスタータ」や「マフィン」などに利用されることもあります。生産者の話によりますと、「最近ではグルメ食材として注目され、栗の粉を練り込んだタリアテッレなどのパスタや、リゾットに加えるレストランなどもあるみたいですよ」とのことでした。
さて、そんな栗の粉のイタリア事情を学んだ後は、是非マンマのレシピの「カスタニャッチョ」にも挑戦してみてください。
ところで、今回のマスタークラスは実はトスカーナ州主催のプレスツアーの一部でした。トスカーナ州の美味しいご当地グルメを食べ歩きする2泊3日のツアーに招待されて、日本ではまだ馴染みのない美味しいものをたくさん食べ、素敵な生産者の方々を訪問してきました。
①トスカーナ州から招待!ご当地グルメの”食い倒れ”プレスツアーに参加しました<第一回>
②アザミやアーティチョークの花で固めてつくる、ヴォルテッラのペコリーノ/トスカーナ州主催プレスツアー<第二回>
③大理石の器で熟成される、真っ白な「コロンナータ村のラルド」口の中でトロける絶品/トスカーナ州主催プレスツアー<第三回>
そんなツアーの様子を3回に分けてリポートした記事もあわせてどうぞ。上記のタイトル(青色)をクリックすれば記事をご覧いただけます。
★栗粉の焼き菓子 カスタニャッチョ
https://italiazuki.com/?p=46831
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