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生きる活気がみなぎるナポリ

もう何十年も前の話。本誌連載中のカメラマン、篠さんと一緒に朝市の撮影をしにホテルを出た。するとそこにいた警官が、篠さんのたすき掛けをしている2台のカメラを指差して、「それはよくない気をつけろ」と言って注意してきた。篠さんはイタリアのベテラン。「その辺りは心得ている」と、うまく話して先に進んだ。

しばらく行くと、今度はサラリーマン風の紳士が「カメラはしまったほうがいい」と親切に声をかけてくれた。篠さんも「ありがとう」と答え、一度はカメラをしまうが、それでは撮影にならないと、また取り出し同じようにたすき掛けにして歩いていた。すると、スクーターに乗って一度は通り過ぎたおばちゃんがわざわざ大声で呼び止めながら戻ってきて、「ダメ、ダメ、ダメ! カメラはしまいなさい」と言うのだ。しかもおばちゃんはしまうまでそこを立ち去る様子もなく、滔々となぜ危ないかを話し始める。さすがの篠さんも、この短時間の間に同じことを3人に言われたら、しまわないわけにはいかない。そこは大人しくカメラをしまいメルカートへ向かった。そして十分に注意をしながら撮影を始め、無事になんのトラブルもなく、一見陽気なナポレターノたちの写真を収めることができた。

この話、ナポリが危険な街だと言いたいのではない、ナポリは誇りと自信に満ち、郷土愛に溢れた地元民に支えられている魅力的な街ということだ。

美しい海岸線と地理的優位性から、独立と被支配を繰り返してきた歴史の中で、文化が交差して積みあげられてきたナポリ。雑然とした街並みや、けたたましい車の騒音、荒々しく飛び交う人々の声、貧困と富裕、数多ある教会、エスプレツソ、ピッツア、王宮……そういう混沌の中で、生きる活気がみなぎるのがナポリであり、来る人を惹きつけてやまない。

最近では、カメラ片手に歩く観光客も増え、タクシーもほぼぼったくられることはほとんどなくなり、ずいぶんセーフティな街になったようだ。むしろ昔のようなハラハラ、ドキドキのナポリを懐かしむ人も少なくないのかもしれない。
 
それでもナポリは、ナポリである。
 
発行編集人 マッシモ松本
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