トスカーナ州(小林 真子)

居心地が悪〜い夕食会?!トスカーナでジビエづくし

トスカーナでジビエづくし料理

先日、イタリア人の友人たちに誘われてカッチャトーレ(猟師)たちが狩って自らが料理するという「イノシシ他ジビエづくしディナー」に参加してきました。フィレンツェを州都とするトスカーナ州ではイノシシや鹿、子鹿などのジビエ料理はポピュラーで多くのレストランで食べられます。ちなみに日本で浸透している”ジビエ”はフランス語、イタリア語ではselvaggina(セルヴァッジーナ)といいます。ついでにイノシシはcinghiale(チンギアーレ)、鹿はcervo(チェルヴォ)やノロジカはcapriolo(カプリオーロ)です。

ジビエ料理はそんなに得意ではない私は、「ジビエづくしの夕食会は少々厳しいかも・・」と思ったのですが、久しぶりに会う友人たちも参加することから、とりあえず行ってみることにしました。日本の今年の干支は亥ですし、イノシシ料理はなにかご利益があるかもと願いつつ。。。

 

なんとも居心地の悪〜い夕食会?!


場所はフィレンツェから車で1時間ほどの、アレッツォ近くのポンティチーノという街。この日はミラノやローマなど遠方から来る人達もいて総勢50人ほどが集まりました。途中の車中で、今回誘ってくれた友人に「実はそんなにジビエって得意ではないんだよねえ・・。」と打ち明けると、「私もなのよ〜」と友人も料理内容には少々不安な様子。「食べられそうなものを食べようねえ」と言いながら会場に入りました。


しか〜し、建物内に入って驚愕。壁中にイノシシやら鹿の剥製の首、なにかよくわからない動物の頭蓋骨がこれでもかっていうほどたくさん・・。しかも壁中にはカラー写真が多数貼られているのですが、遠目に見ても撃ち殺した動物を手に抱え持ち上げている類の写真ということがわかり・・・。


全ての壁がこうしたもので覆われているので、どの席に座ってもどれかの動物と目があってしまうという・・。「悪趣味すぎる〜〜〜(涙)こんなところでジビエ料理を食べるの〜!?」と入り口で固まってしまいました。隣を見ると、友人も絶句している様子。


生まれて初めて食べる驚きの料理は〇〇の生肉!

鹿の頭の剥製はあまりに巨大なので「それほど現実味がない、偽物っぽい」と自分に言い聞かせながら、鹿の頭を前方に見る席に座りました。既に並んでいるアンティパスト(前菜)は見るからにお肉づくし。


内容は、イノシシのプロシュート各種、イノシシのサラミ各種、イノシシのラグー(ミートソース)のブルスケッタ、イノシシのSoprassata(ソープラッサータ)=頭部分をゼラチンで固めたもの、トマトソースのブルスケッタなど。イノシシのプロシュート&サラミはさすがのハイクオリティ。周りのイタリア人たちも絶賛しておりました。

これらは過去にも食べたことがありましたが、イタリア人もびっくりの一品が紛れ込んでいました。それは、「ノロジカ(バンビ)のタルタル=生肉のタタキ!」上の写真の左上のお肉の山がそれ。

そもそも生肉は苦手な上にバンビの生肉とは・・・。これにはなかなか手をつける勇気が出ず、躊躇していたのですが、周りが「美味しいよ〜。すごくデリケートな味だよ、絶対問題無く食べられるって!」とあまりに勧めてくるので、これで口にしないのも場が白けるしなあ〜と、急にNOの言えない日本人状態になって思い切って口にしました。感想は・・・確かにデリケート。癖がなく味そのものが薄い。美味しくもまずくもないというのが正直なところ。

ただ、ねっとりした口当たりがどうにもいかにも生肉という感じがして、二口でギブアップ。残りは前に座っていた大食いの友人のお皿にこそっと移しておきました。


アンティパストを食べている時に、猟師さん登場。「この人、どのくらいのイノシシを狩ったんだろうか・・」などとそんなことが頭をよぎりましたが、白いいんげん豆を添えたブルスケッタを手渡ししてもらいました。


プリモピアット(一皿目)はイノシシのラグー(ミートソース)のパスタ。イノシシの肉は牛肉より味が濃いというか、甘みがあるというか、どっしりした味わい。濃厚なミートソースです。


セコンドピアット(二皿目、メイン料理)の1つめは鹿肉の煮込み。写真で黒いのはオリーブ、白いのはポテトです。人参や玉ねぎの甘みがしみわたった味わい深い一品なのですが、なにしろこの料理にたどり着くまでに既に生肉を含めた大量のお肉を消費しているわけで、「う〜ん、重そうな料理・・」という印象。とても美味しいけど実際なかなかヘビーな一品でした。


もうお肉はおなかいっぱい!というところへ、さらにもう一品お肉料理が。ノロジカのコトレッタ(フライ)でした。私は小さい一切れだけ頂きましたが、周りのイタリア人たちは何枚もぺろりと食べていました。やっぱりイタリア人は良く食べるなあと見ているだけでさらにお腹がいっぱいに。ヘビーなお肉料理で疲れた胃に優しそうなサラダを食べたら、悲しいかな、オイルがたっぷりからめられたサラダで野菜までヘビーとは・・撃沈。


既にお腹いっぱいになっており、また胃もたれも感じ始めており、デザートには全く期待しておらず、フルーツでも出してくれないかなと思っていたのですが、これまた見た目にヘビーそうなデザートが登場。しかーし!これが超美味しかった!写真左はナッツとチョコレートのケーキ、右はリコッタチーズケーキでしたが、このリコッタチーズケーキが絶品。デザートは別腹とばかりにぺろりと頂いてしまいました。


食事の最後は食後酒。グラッパ(ブドウの蒸留酒)かヴィン・サント(トスカーナの甘いワイン)を選べましたが、消化促進にはグラッパがいいとはわかっていながらヴィン・サントを。もちろん自家製で、とっても美味しく頂きました。

やはり、美食の国イタリア。この国にはまだまだ色んな料理があるものだと感心させられた夕食会でした。さんざんヘビーだの書いてしまいましたが、どの料理も素材を生かした美味しい料理でジビエ料理好きな方にはたまらないディナーだと思いました。

ただ・・・料理の内容はともあれ、壁の動物たちからなんだか責められているような気がしながら食事をするという、罪悪感のあるちょっぴり居心地の悪い夕食会ではありました。この日の夜は大量のお肉の消化ができず胃もたれでなかなか寝付けなかったのですが、これはもしや動物たちの呪いかも・・なんてちょっと思ったり・・・。夕食会の最後にみんなから「来年もまた来ようね〜!」と言われましたが、正直少し懲りたかな。。。

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小林 真子(Mako Kobayashi) フィレンツェ在住、ライター、元静岡朝日テレビ報道記者。フィレンツェ在局FMラジオに出演中。イタリアの労働ビザを取得し起業、イタリア製アイテムのオンラインショップ「アミーカマコ」を経営。「週刊新潮」でイタリア関連記事、「宅ふぁいる便」「あがるイタリア」等でコラムを連載。イギリス留学、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校留学。海外約30ヶ国を訪れ、イタリアは20州のうち17州周遊。 ショップ:AmicaMakoオンラインショップ/ブログ:AmicaMakoイタリアンスタイルFACEBOOKInstagram

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    ヴェネトおよびフリウリを中心に、通訳、翻訳、地元マンマの料理レッスン及び生産者訪問コーディネイト、そして野菜を中心とする農産品の輸出業などの活動を行う。各種生産者との繋がりをとても大切に、ヴェネト州の驚くほど豊かな食文化を知ってもらうべく、ブログ『パドヴァのとっておき』では料理や季節のおいしい情報を中心に発信するなど活動中。