エミリア・ロマーニャ州(堂内 あかね)

太古からの天然甘味料サバ

日本は例年にないほど早い梅雨明けと猛暑。イタリア好きの皆さまいかがお過ごしですか?

エミリア・ロマーニャ州にも本格的な夏が来ています。

毎年7月上旬には小麦の刈り取りが行われ、

葡萄畑には若いぶどう日に日に実を大きく実らせていきます。


時季としては気が早いのですが、今回は実ったぶどうで作る天然の甘味料サバのお話を紹介します。


9月の中旬から下旬にかけて収穫される完熟のぶどう、ワイン造りはもちろん、バルサミコ酢作りに使うモストコット(ぶどう果汁煮詰め液)、それをもっと煮詰めたサバという天然甘味料を作ります。ワイン同様その歴史は大変古く、古代ローマ時代から大量に採れるぶどうの加工品として、蜂蜜と並ぶ貴重な甘味料として珍重されてきました。現在でも家庭で作る方が結構いらっしゃるのです。


まずは収穫したぶどうを果粒と果梗に分け、実を潰してモスト(ぶどうの汁)をとります。写真上は古い木製のモストを取る農工器具、ない場合家庭ではタライの中で足踏みで。


それを鍋に入れ、沸騰直前まで温めて灰汁をしっかり取った後、

ゆっくりと沸騰させないように煮詰めて行きます。


写真は約12時間後くらい煮詰めた所。もう漆黒の艶のある液体に変わっています。このように直火で、屋外においてぶどうの絞り汁を12時間ほど煮詰めたものがモデナではモストコットと呼ばれ、伝統的なバルサミコ酢の唯一の原料として使います。秋に作ったこのモストコットは大きな容器に入れられ、酵母によるアルコール発酵を行います。それをバデッサと呼ばれる大きな木ダルにおいて酢酸発酵させた後、大きさ、木の材質の違う樽のセットへと移し替え最低でも12年、毎年の液体の移し替え作業を行いながら熟成を行います。


写真はレオナルディ社の伝統的な製法で作られるバルサミコ酢の醸造室の様子。

横道に逸れましたが、今回ご紹介するサバは天然の甘味料として使いますので、アルコール発酵しないように、モストコットをさらに24時間合計36時間ほど煮詰め、それを熱いうちに容器に移し、保存したものです。すると、熟成されている間、瓶内で化学変化が起き、澱が瓶の底に貯まります。家庭で作ったものは、クリスマスのお菓子に使ったり、お料理に使ったり、次のぶどうの収穫まで大事に使われます。


レオナルディ社のサバは、厳選されたバルサミコ酢の醸造に使用するぶどうを使用し、ゆっくりと煮詰めた後、なんと一年しっかりと熟成させて、澱をしっかり沈殿させた後、フィルターを通したものを瓶詰めしているので、ぶどうの香りはもちろん、熟成段階でゆっくりと発生した有機酸の香りが混ざり合い味の点でも、香りの点でも素晴らしい製品です。とてもぶどうだけで作られたとは思えないお味です。


伝統的な製法で作られたバルサミコ酢は、お値段もさることながら、なかなか流通しませんので、日本はもちろん、イタリア国内でもなかなか手に入らない希少品。私からのちょっと変わったサバの使い方のオススメは、ワインビネガーとサバを一対一で混ぜ合わせ、即席バルサミコ酢を作ること。カラメル色素や濃縮還元ぶどう果汁を使ったようなバルサミコ酢より、ずっと上質で上品な味になること請け合いです。
余談ですが、我が家ではみりんがないときに、みりんの代わりに使ったり色々重宝しています。


レオナルディ社

http://www.acetaialeonardi.it/

食の宝庫より、悠久の昔から今へ続く食と文化をバルサミコ酢にかける情熱と共にお届けします!

堂内 あかね(Akane Douchi) 日本で企業の管理栄養士として5年間勤務後、2005年渡伊。2007年、モデナ屈指の旧家に嫁ぎ、一族に継承されていたバルサミコ酢の樽の管理を夫と共に引き継ぐ。2009年よりスピランベルト市にある「伝統的なバルサミコ酢 愛好者協会」(Consorteria dell’aceto balsamico tradizionale di Modena)に所属し、バルサミコ酢マエストロ試飲鑑定士資格を目指し、研鑽を重ねている。バルサミコ酢の醸造の傍ら、イタリア人向け日本家庭料理教室の講座を北イタリア各所に持つ。また、自宅にて醸造室の試飲見学会、バルサミコ酢を使った食事会、料理教室を主宰。バルサミコ酢醸造のエピソード、見学会などは Facebook Akane in balsamiclandにて紹介中。

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    鈴木暢彦(Nobuhiko Suzuki) トスカーナ州シエナ在住。2009年渡伊。シエナの国立ワイン文化機関『エノテカ・イタリアーナ』のワインバー・ワインショップにて5年間ソムリエとして勤務。2015年よりシエナ中心街カンポ広場付近にイタリア人と共同でワインショップをオープン。現地ワイナリーツアーも企画し、一般からプロの方までのアテンドで100軒以上のワイナリーへ訪問。また、日本へのイタリアワイン輸出のサポート業務も行い、イタリアワインの日本マーケットの構築に貢献している。イタリアの著名醸造家ヴィットーリオ・フィオーレ氏、パオロ・カチョルニャ氏が手がけるワインも日本へ紹介。資格・・・AISソムリエプロフェッショニスタ。 シエナ観光・ワイン情報サイト『トッカ・ア・シエナ』
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  • ミラノの食と暮らしの旬をお届けいたします!
    小林 もりみ(Morimi Kobayashi) 手間と時間を惜しまず丁寧につくる品々、Craft Foodsを輸入する「カーサ・モリミ」代表、生産者を訪ねながら、イタリアの自然の恵みを日本へ届けている。2008年 イタリア・オリーブオイル・テイスター協会『O.N.A.O.O』(Organizzazione Nazionale Assaggiatori Olio di Oliva)イタリア・インペリアの本校にてオリーブオイル・テイスターの資格取得。2009年スローフード運営の食科学大学( Universita degli Studi di Scienze Gastronomiche)にて『イタリアン・ガストロノミー&ツーリズム』修士課程修了。 2014年より食科学大学修士課程非常勤講師。
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    ヴェネトおよびフリウリを中心に、通訳、翻訳、地元マンマの料理レッスン及び生産者訪問コーディネイト、そして野菜を中心とする農産品の輸出業などの活動を行う。各種生産者との繋がりをとても大切に、ヴェネト州の驚くほど豊かな食文化を知ってもらうべく、ブログ『パドヴァのとっておき』では料理や季節のおいしい情報を中心に発信するなど活動中。