
過去の「イタリア映画祭」で好評だった作品3本が一挙上映される『イタリア映画祭傑作選 Viva!イタリア』が6月29日(土)から始まりました。
その中の1本、マルゲリータ・ブイ、シルヴィオ・オルランドというイタリアを代表する二人の俳優が主演した映画
『もうひとつの世界』(1998)のジュゼッペ・ピッチョーニ監督に話を聞きました。
この作品は、生涯を修道生活に捧げる儀式を控えた女性カテリーナが捨て子を拾ったことがきっかけで、
クリーニング店を経営する独身の中年男性エルネストと出会います。
ともに捨て子の母親を探すうちに、やがて二人の間にも微妙な感情が芽生えていく、といったストーリー。
ピッチョーニ監督は「こういった企画上映は、日本の人がイタリア人の生活を知るのに一役買っているようで、大変興味深いし、
私の作品が選ばれたことを光栄に思います。
『もうひとつの世界』は、私にとっては新たな出発点となった、自分のキャリアを豊かにしてくれた作品です。
これを撮ったことによって私もより意識して自分自身を表現できるようになった、いわば私の署名を得ることができた、
そんな作品なんです」と思い入れと作品の出来への自信のほどを語ります。
マルゲリータ・ブイにとっても『もうひとつの世界』は女優としての転機となった作品で、
彼女は生まれた子供にこの映画の役名である「カテリーナ」と名付け、
ピッチョーニ監督を“ゴッドファーザー(名づけ親)”と呼んでいる、というエピソードも明かしてくれました。
『もうひとつの世界』の舞台はミラノですが、それについては「尼僧がでてくる物語で
(キリスト教の中心地である)ローマが舞台だったらいかにもという感じになってしまう、ということと、
ミラノはイタリアの産業の中心地であり、ローマなどとくらべるとちょっと厳しい世界、そういう対比があります。
なので、この物語にはミラノの方があっていると思いました」
さらに、もう一方の主人公、名優シルヴィオ・オルランドが演じるエルネストは、
内気でバカンスや楽しいイベントへの誘いも意味なく断ってしまう、どこか人生を楽しむことをあきらめているようなキャラクターですが、
ピッチョーニ監督はこのエルネストを「メランコリックで少年のような心を持っているけれど自分の人生と距離がある、
ガラスの向こうに立っているような男性」と表現します。
「エルネストの人生に、いきなりカテリーナがアグレッシブに入ってくることで彼は非常に戸惑います。
私は、自分の周りを囲んでいるガラスがあるなら、それを壊して、より自分の人生の真ん中に立つ、それが愛の意味だと思います。
この映画は尼僧とクリーニング店主のラブストーリーから、ちがった人生を生きる可能性、
そんなチャンスは誰にでもあるということを力強く語っている、そんな愛の物語なんです」

ジュゼッペ・ピッチョーニ監督
『イタリア映画祭傑作選 Viva!イタリア』では、
イケメン俳優、キム・ロッシ・スチュアート主演『ハートの問題』、
ハリウッドでも活躍するガブリエレ・ムッチーノ監督の『最後のキス』も同時に上映されています。
いずれも名作揃いなので、ぜひお見逃しなく!
『イタリア映画祭傑作選 Viva!イタリア』概要
『ハートの問題』
監督:フランチェスカ・アルキアージ 主演 アントニオ・アルバネーゼ、キム・ロッシ・スチュアート
『最後のキス』
監督:ガブリエレ・ムッチーノ 主演 ステファノ・アッコルシ、ジョヴァンナ・メッゾジョルノ
『もうひとつの世界』
監督:ジュゼッペ・ピッチョーニ 主演 マルゲリータ・ブイ、シルヴィオ・オルランド
配給:パンドラ
■6月29日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか、全国順次公開
*大阪では8月に公開される予定です。
http://www.vivaitaly-cinema.com/
渡辺いさ子/Isako Watanabe