「イタリア好きの好きなイタリア」発売にあたり

自分の本が世の中に出ることが、こんなに緊張することだとは思っていませんでした。

3年前のちょうど今頃、『イタリア好き』の創刊号リグーリア州の特集をフリーマガジンとして発行しました。

会社勤めを辞めてから、何か自分で発信できるものがないかと考えていた時に、

”イタリア”というキーワードが最後まで残り、それを形にしたものが『イタリア好き』でした。

でも、僕はイタリアに長年住んでいたわけでもなく、イタリアについてそれほど詳しいわけでもなかったし、

イタリア語もろくに話せません。

数度の旅行と、仕事で訪れたイタリアでしたが、その魅力にとりつかれていました。

だから、長年イタリアを研究したり、愛している方が多い“イタリア”という括りの中で、

僕が”イタリア好き”を名乗るには、あまりにもおこがましいとは感じていました。

それでも創刊号を発行した時から、思いのほか多くの方からいい反応があり、

自分の信じていた方向性が認められて、嬉しく感じました。

内心は果たしてどうなるか、本当に不安だったし、1号といいつつ、

この先も続けていけるのかなど、実はあまりはっきりとは決まっていませんでした。

でも、創刊号の反響のおかげで、広告主からも継続していくことで話が決まり、

そして現在12冊までを発行してきました。

 

この創刊号を発行した時に、いいことも悪いことも含め、アドバイスをもらうために、

出版社勤務時代の先輩であり、尊敬する編集者の前田慎二さんに『イタリア好き』を見てもらったら、

その時、すぐに「おもしろい、これいいよ」と言われ、嬉しく、安堵した気持ちになったことを覚えています。

それからずっと前田さんは、毎回イベントにも参加してくれたりしながら、見守ってくれていました。

そして今回のこの書籍は、その前田さんが企画し、出版社に持ち込んでくれて決まった企画でした。

企画を持ち込むという話は聞いてはいたのですが、決まるはずもないと思っていたので、

決まったと聞いた時には、ビックリしたのが正直な気持ちでした。

先にも書いたように、僕がイタリアについて書いた本を出すのは、

フリーマガジンを出すのとはわけが違う、あまりにも僭越すぎると感じていました。

それに、恥ずかしながら文章を書くことにも、全く自信がなかったのです。

それでも前田さんは、僕しか経験していない”イタリア”を表現すればいいと言ってくれ、

この言葉のおかげで少し気持ちが楽になり、本を出すことを決めました。

 

本書は、僕が取材中に心動かされたことや、人、

特別に(イタリア的に)おいしいと感じた食事のことなどを中心に、

本誌の『イタリア好き』とはまた違う視点で書いています。

書こうとするテーマを挙げていたら、以外にもオヤジ度が高いことに、自分でもびっくりしました。

僕は”イタリアオヤジ好き”だったのです。

だから、内容にはずいぶん偏りがありますし、親切な旅行ガイドにもなっていません。

あくまでも自分勝手な”イタリア好き”を表現したまでに過ぎません。

期待ハズレだったらごめんなさい。

それでも、楽しくつくることができました。

つくること、書くことによって、気づかされたことも多くありました。

だから、そんなことが少しでも読者のみなさんに伝わればいいし、

そして、それが僕が思う『イタリア好き』の本質なのではないかと、改めて思ったりもしています。

 

出版までには、関係者の方々には大変お世話になり感謝しています。

それと同時に、

『イタリア好き』本誌の企画段階から、一緒に取材、執筆をしてくれてきている、

板倉由未子さんには改めて、感謝の気持ちを伝えたいです。

ありがとうございます。

そして本書では、やはり取材に一緒に行っている、萬田康文さんの写真がたくさん掲載されています。

文章に飽きても、イタリアを感じる写真集としての価値は十分すぎるほどあります。

萬田さんにも、ありがとう。

 

「イタリア好きの好きなイタリア」は明日8日発売ですが、

本日あたりから置かれる書店もあるようです。

できるだけ多くの方に手に取ってもらえれば、

こんなに嬉しいことはありません。

 

最後になりましたが、いままで『イタリア好き』を支えてくれている、

読者のみなさん、設置してくれているお店、イベントなどでお世話になったみなさん、

全てのみなさんに、感謝します。

ありがとうございます。

そして、まだ終わりではありません、

これからも引き続きこれからもよろしくお願いします!

 

イタリア好き委員会 松本 浩明

 

 「イタリア好きの好きなイタリア」 イースト・プレス刊