イタリア映画の傑作「輝ける青春」を手掛けた脚本家チームによる大河ドラマ「ジョルダーニ家の人々(原題:Le Cose che Restano)」が日本でも公開されています。
今年5月のイタリア映画祭では「ここにとどまるもの」というタイトルで上映されていた作品で、上映時間6時間39分の大作です。
物語の主人公たちは、ローマに暮らす中産階級のジョルダーニ家の人々。
技術者の父、元医師の母、外務省に勤める長男アンドレア、心理学者の長女ノラ、建築を学ぶ次男ニーノ、そして高校生の三男ロレンツォ。
ごく普通の幸せな家庭が、ある日突然起きたロレンツォの事故死をきっかけに、
一人また一人と家を離れることとなり、やがてジョルダーニ家の中はからっぽになっていきます。
しかし、愛する弟の死という悲しみを抱えながら生きていく3人の子供たちは、
不法移民の女性や、ある秘密を抱えたフランス人男性、記憶をなくした帰還兵といった人々と出会い、
受け入れていくことによって、やがて一家はまた新たな家族の絆を取り戻していくという感動のドラマです。
上映時間は確かに長いのですが、もともとは4話に分かれたテレビドラマなので、
物語の展開もわかりやすく、次男ニーノと長男アンドレアのエピソードを中心に、様々な出来事がいいテンポで進んでいきます。
同じく長尺の「輝ける青春」は40年間にもわたる物語でイタリアの現代史も見えてくるような内容でしたが、
今回は移民や麻薬、または同性愛、不倫といった現代のイタリアでは身近にあるようなトピックを盛り込みつつも、
数年の間に一家に起こった崩壊と再生をじっくり描くことで、主人公たちがより身近に感じられ、
見終わった頃にはジョルダーニ家の人々と数年を共に過ごしたような気持ちになるかもしれません。
舞台になるローマの風景、シチリアのカンノーリ、「女性の日」に食べるミモザのタルト、
カルネヴァーレなど、スクリーンにほんのちょっと登場する小さなアイテムもイタリアらしさを伝えてくれます。
「ジョルダーニ家の人々」
監督: ジャンルカ・マリア・タヴァレッリ
出演: パオラ・コルテッレージ クラウディオ・サンタマリア ロレンツォ・バルドゥッチ
2012年7月21日より東京・岩波ホールにて公開
(*1日1回上映、途中休憩3回あり)
さらに、「息子の部屋」などで知られるナンニ・モレッティ監督が「人間・ローマ法王」を皮肉のきいたタッチで描いた
「ローマ法王の休日」も公開されています。カンヌ映画祭にも正式出品された話題作です。
「ローマ法王の休日」
監督/出演:ナンニ・モレッティ 出演:ミシェル・ピッコリ
2012年7月21日より公開
渡辺いさ子/Isako Watanabe