イタリア映画観ました①   カラブリアが舞台の映画「四つのいのち」が公開中

今号の「イタリア好き」の特集カラブリア。

その海辺の美しさは有名だが、山岳部にも独特の情緒や伝統がある。

昨年のカンヌ国際映画祭で評判を呼び、現在日本で公開中の映画「四つのいのち」は、

カラブリア州ヴィボ・バレンティア県の山岳地セッレが主な舞台。

タイトルの「四つのいのち」(原題 Le Quattro Volte)とは、

牧夫(人間)、仔山羊(動物)、巨木(植物)、炭(鉱物)を表し、

映画はこれら4つのパートから成り立っている。

山羊を飼って暮らす老いた牧夫は、毎晩、教会の埃を薬代わりに水で飲んでいた。

彼が静かに息を引き取った頃に生まれた仔山羊は、森で群れからはぐれ、巨木の下で眠りにつく。

その巨木は村の祭りのため人々に切り倒され、やがてそれは炭焼き職人たちの手によって木炭となる…。

このようなエピソードを、本作が長編二作目となるミケランジェロ・フランマルティーノ監督は台詞を排して描き出した。

観客は現地でこれらの出来事をそっと覗き見しているような、そんな気持ちにもなるかもしれない。

ある人は、この映画に登場する唯一のプロの役者という牧羊犬の見事な演技や、

やんちゃそうな仔山羊の豊かな表情に癒され、

またある人は牧夫の昔から変わらない日々の営みや、

古くからの伝統的手法で行われている珍しい炭焼き、

村の広場に巨木を立てるアレッサンドリア・デル・カレット村の伝統行事

「ピタの祭り」が見られることに興味を惹かれることだろう。

カラブリアの自然と共に暮らす人々や生き物、

そして古くからの伝統を捉えた本作は、フィクションの映画なのだがドキュメンタリーのようでもある、

穏やかでナチュラルな空気の流れている映画。

人間も自然界ではひとつの生物の種にすぎない―そう、

感じさせる。カラブリアに興味を持ったなら、ぜひチェックしたい作品だ。

文:渡辺いさこ



『四つのいのち』

4月30日より、シアター・イメージフォーラム他全国順次公開

配給:ザジフィルムズ

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