トスカーナ州(鈴木暢彦)

一度開けたワインをできるだけ保存させるためには?

皆さん、こんにちは

シエナのソムリエ鈴木です。

今回は、ワインを家で楽しむ上で役に立つような情報をお伝えしたいと思います。


ワインの仕事をしていると、多くの方から『一度開栓したあとワインはどのくらいもちますか?』という質問を受けます。

家でワインを飲むけど、一本飲みきれない。

余ったワインはすぐ美味しくなくなってしまうので、料理に使う。

皆さんもそんなご経験はないでしょうか?

ワインをその都度飲み切ってしまうことができれば、それに越したことはありませんが、ご自宅で一人または二人で飲む場合は少しずつ楽しみたいという方も多いことでしょう。

一般的にワインボトル一本750mlで、およそ6杯分となります。つまり二人で3杯ずつ。特別な日ならともかく、日常的には1~2杯で十分な場合もあります。

一度開栓したワインがなぜクオリティーを失っていくのか、その根本的な理由はワインが空気と触れ、酸化するからにほかありません。

酸化が進むと、ワインは香り、味わいのバランスを崩してしまいます。

私たち日本人にとって身近なところでいうと醤油と似ているところがあります。醤油は開栓して空気に触れると次第に味わいに鮮度が感じられなくなり、数日経つと色合いも濃くなり風味を損ねてしまいますよね。また保管条件というのも、あまり暖かいところに置いていると痛んでしまいます。裏のラベルにもよく暗い涼しい場所に保管してください、との記載があります。

つまり酸化を促進させてしまう条件というのが、

空気

直射日光

高温度

なのです。これらの条件を避けることが、酸化させない(酸化を遅らせる)唯一の方法ということになります。

中でも、空気と触れることは著しく酸化を促します。

対処としては、飲んだワインに栓をしておくというのは基本的なことですが、最も気を付けなければならないのはワインボトルの中の空気の量です。

ワインに空気が触れると酸化するといっておいて、ボトルの中にたくさん空気が入っていたら栓をしようが何の対策にもなっていません。

例えば、一度開栓したワインを一滴も飲まずにまたコルクで栓をします。

この状態のワインというのは、一度開栓したことによりわずかな空気は入りますが、ボトル自体はワインのみで満たされており、空気残量はほぼありません。尚且つワインボトルの首のところまでワインが達しているため、空気に触れるワインの表面積というのは、極狭い範囲です。

すなわち一度開栓はしたものの、ほぼ酸化は進まない状態のワインになります。


ワインを飲んで、空気が残る体積が大きくなればなるほどワインに対する空気の量が増え、比例して酸化によるダメージも進みます。空気にふれているワインの表面積にしてもボトルの太い胴部分になるため必然的に大きい範囲になります。


ボトル内の空気の残っている量によって酸化の影響に違いがでますから、一杯だけ飲んで栓をしたワインと4杯ほど飲んで栓をしたワインを1日経って比べた時に、よりダメージを受けているのは当然後者のワインになります。

一番保存が難しい状況は、残りが1杯分くらいになったワインです。5杯分以上は空気で満たされていますから、栓をしたとはいえ酸化ダメージは計り知れません。

ワイングッズでは、ボトル内を真空状態にするようなバキュームポンプ式の栓も販売されています。通常使用には効果的ですが、残り僅かになったワインから完全に空気を取り除くのには限界があります。


では、どのように対処すればワインを日持ちさせることができるのでしょうか?

自分が個人的に最適だと思うワイン保存の方法をお教えしましょう。

飲む量が予め決まっている場合。(半量分け)


ハーフサイズの空のボトルと栓を用意する。

そのハーフサイズのボトルをワインで満たし、空気をなるべく残さずに栓をする。

こうすることで、ほぼ酸化の進まないハーフボトルのワインができます。

残っている半分の量のワインを楽しんで、保存したハーフボトルは次回にキープすることが可能です。

ハーフボトルの方は1週間以内に飲むようであれば、ほぼ問題なく楽しめることでしょう。

量が決まっていない場合

いつも、ハーフサイズだけというよりも、その時の気分で自由に量を決めたい時もありますよね。

バキュームポンプ式の栓を使用

・1~2杯分だけ飲んだ場合

ノーマルのボトル(750ml)でそのまま保存、ただしバキュームポンプ式の栓で空気を抜く。


・半分飲んだ場合(約3杯)

ハーフボトル(375ml)への移し替えでワインを満たして栓をする。

・4杯以上の場合

ハーフボトル(375ml)へ移し替え、さらにバキュームポンプ式の栓で空気を抜く。※次の日に飲むようであれば、ノーマルボトル(750ml)のままバキュームポンプ式の栓だけでもOK

・残り1杯分以下の場合。


飲み干しましょう。笑

 

最後に

ワインの美味しさというのは、誰かが決めることではなく、皆さん自身が感じることです。

酸化を少ししている状態でも飲めないということはありませんし、まして、酸化が健康に良くないということでもありません。

レストランやバールで料金をいただいてワインを提供する立場では、一定のクオリティーを保証する必要がありますし、ワインを別のボトルに移し替えることもできません。しかしながら、家で飲む分にはご自身の尺で自由にワインを楽しむことができるのです。

なにより実際に試して、酸化による変化というのを経験し理解することが重要です。

ワインによっては、1日経って空気の循環により硬さがほぐれ、心地よいバランスのワインになるような気難しいワインもあります。

レストランでも熟成が進んだワインなどはデキャンタといって専用の瓶に移し替えて、あえて酸化を促すケースがあるのです。

人間も、狭いところに長いこと閉じ込められていたら、解放された瞬間に伸びをして、深呼吸して、体をほぐしたくなりますよね。

ゆっくりと空気に馴染んで力強いワインの命が芽吹く場合もあるということを覚えておきましょう。

色々なワインを時間をかけて楽しむことでまた新しいワインの世界が広がるかもしれませんね!

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

ホームページ 『トッカ・ア・シエナ』https://www.toccaasiena.com

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鈴木暢彦(Nobuhiko Suzuki) トスカーナ州シエナ在住。2009年渡伊。シエナの国立ワイン文化機関『エノテカ・イタリアーナ』のワインバー・ワインショップにて5年間ソムリエとして勤務。2015年よりシエナ中心街カンポ広場付近にイタリア人と共同でワインショップをオープン。現地ワイナリーツアーも企画し、一般からプロの方までのアテンドで100軒以上のワイナリーへ訪問。また、日本へのイタリアワイン輸出のサポート業務も行い、イタリアワインの日本マーケットの構築に貢献している。イタリアの著名醸造家ヴィットーリオ・フィオーレ氏、パオロ・カチョルニャ氏が手がけるワインも日本へ紹介。資格・・・AISソムリエプロフェッショニスタ。 シエナ観光・ワイン情報サイト『トッカ・ア・シエナ』

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    ヴェネトおよびフリウリを中心に、通訳、翻訳、地元マンマの料理レッスン及び生産者訪問コーディネイト、そして野菜を中心とする農産品の輸出業などの活動を行う。各種生産者との繋がりをとても大切に、ヴェネト州の驚くほど豊かな食文化を知ってもらうべく、ブログ『パドヴァのとっておき』では料理や季節のおいしい情報を中心に発信するなど活動中。