プーリア 冬野菜特集

vol.242016/2/1カートに入れる

クチーナ・ポーベラは、
もはや豊さの象徴だ。

列車はモリーゼのテルモリを過ぎて、暫くしてからサンセベーロのアナウンスが聞こえた。
チヴィタノーヴァ・マルケを出発してようやくプーリアに入り、長い列車の旅もそろそろ終わると思った。ところがなかなか下車駅ファサーノの案内は聞こえてこないのだ。車窓にはオリーヴ畑が広がったり、アドリア海もたまに見える。停まる度に聞き覚えのある駅名がいくつか出てきて気づいた。「そうだ、プーリアは大きいんだった」列車でのプーリア入りは久しぶりだったし、その前の長旅のせいか、早く着きたいという気持ちで、そんなことすらすっかり忘れていた。
南北に長く、他州と比べても平野部が多く、大規模な農業が発達し、オリーヴを始め、ブドウ、小麦、そして野菜類の栽培が盛んだ。オリーヴオイルはイタリア国内の生産量の約70%を占める。また、アドリア海とイオニア海の両方に面しているので、魚介類も豊富だ。
プーリアに入ってからさらに列車に揺られること1時間と少しでやっとブリンディシ県のファサーノ駅に着いた。この辺りは広いプーリアのほぼ真ん中に当たり、ムルジェ地域と言われ、石灰岩が採掘でき、その石を使った三角屋根の建築物トゥルッリ(単数はトゥルッロ)が多く見られる地域だ。税金を逃れるために考え出された、接着せずに建てられた貧しい家は、今ではプーリアの象徴として世界中から観光客を集めている。
今回のテーマは野菜。イタリア料理と言えば、パスタや肉料理を思い浮かべる人も多いだろうが、案外にイタリアは野菜が豊富で、特にプーリアや、カンパニア、カラブリアといった州は経験上、種類も多く、その料理のバリエーションも多岐にわたる。そしてなんと言っても味が濃く、野菜の力強さを感じるのだ(中にはダメなものあるけど………)。
その昔、農民や庶民の料理として伝えられてきたクチーナ・ポーベラ(直訳は貧しい食事)は、野草や、野菜、豆を使った料理が中心だったが、この料理はもはや高級料理ではないかと思う。 
現在では、おいしいく正しい野菜を食べることのほうが難しくなり、日本ではそうすることは却って費用も高くついたりする。今回の取材でいちばん感じたことは、プリエーゼたちの野菜自慢だった。自前の野菜や、野草を嬉しそうに差し出す姿が、なんとも豊かで、羨ましかったのだ。
野菜食べようか、プーリアで。

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“アルプスのリヴィエラ”で造られるネッビオーロ ヴァッレ・ダオスタ・ドナス Presented by モンテ物産

OLYMPUS DIGITAL CAMERAイタリアの北西の端には、イタリアで最も小さい州であり、マッターホルンとモンブランを含めたアルプス山脈を有するヴァッレ・ダオスタ特別自治州がある。その州南東部の町ドナスにあるのが、その町の名前を冠したワイナリー、ドナス社だ。

ヴァッレ・ダオスタのDOC(原産地統制呼称)は、品種別のDOC(“ヴァッレ・ダオスタDOC ピノ・ノワール”や“ヴァッレ・ダオスタDOC シャルドネ”など)以外に7つのサブゾーン(Donnas, Arnad-Montjovet, Blanc de Morgex et de La Salle, Chambave, Enfer d’Avrier, Nus, Torrette)に分かれている。各サブゾーンのDOC規定が定める品種、収量、アルコール度数などの条件を満たし、一定の品質が認められれば、例えばドナスエリアであればValle d’Aosta DOC Donnas(ヴァッレ・ダオスタDOCドナス)と表記することが許される。

マリオさん「この“ヴァッレ・ダオスタDOCドナス”としてのDOC認証を持つワインは、実は我々ドナス社が全て生産しているんだよ。」
そう説明してくれたのは、ドナス社の社長マリオ・ダルバルドさんだ。非常に柔らかな物腰で、常に笑顔で優しく説明をしてくれる。

「ドナスは人口がたった2000人の小さな町だが、このあたりでは昔からワイン造りが伝統的に行われていて、いいワインができることで知られていたんだ。ドナス社は1971年にDOCドナスが誕生した時に設立された協同組合で、組合員は現在73人なんだが、彼らの家族も含めて考えるとドナスの町でワイン造りに関わる人の数がいかに多いかがわかるだろう?」
もちろんマリオさんも自分の畑を持っており、社長でありながらもブドウ栽培を愛する農民の一人だ。

▲山の斜面に広がるブドウ畑
▲山の斜面に広がるブドウ畑
「各人が持っている畑は小さく、全て合わせても25ヘクタールにしかならない。ただそのほぼ全てが町の北側にある山の斜面にあり、南向きの最高の日当たりなんだ。西側にも山があるので、北西に向かった先にあるアルプス山脈からの寒い風もこれらの山がブロックしてくれ、冬でもそれほど寒くなく夏は35℃に達することがあるぐらい暑くもなる。“アルプスのリヴィエラ”なんて呼ばれているぐらいなんだ。」
山がちな州なのでスキーに訪れる人も多く寒いイメージだが、渓谷にあるドナスの冬の平均気温は意外と低くはない。「このエリアではバローロに使われるネッビオーロを伝統的に栽培しているが、ドナスではピコテンドロと呼ばれ、ピエモンテのネッビオーロとは少しタイプが違うんだ。味の保証はワイン好きでも有名なナポレオンがしてくれるよ!」そういうとマリオさんは冗談めかして笑った。

▲収穫の風景
▲収穫の風景
ナポレオン=ボナパルトといえば、前脚を跳ね上げた荒馬を平然と乗りこなしている肖像画を思い浮かべる人が多いだろう。あれは西暦1800年のグラン・サン・ベルナール峠からのイタリアへのアルプス越えを描いたもので、ナポレオン軍はその後ドナスの町を通ってピエモンテ州へと侵攻した。
「ナポレオンはどこにでもフランスワインを持って遠征に行くほどフランスワイン好きだったのだが、この町に立ち寄った際に、ここドナスのワインはとても美味しく気に入った、と言ったんだ。その後もドナスの人々は伝統を守ってワインを造り続けたんだ。」


▲ヴァッレ・ダオスタDOCドナス Napoleon
▲ヴァッレ・ダオスタDOCドナス Napoleon
「2000年にはナポレオンのドナス来訪200周年の記念に、彼に敬意を表して“ヴァッレ・ダオスタDOCドナス Napoleon(ナポレオン)”を造ったんだ。彼の名に恥じない素晴らしいワインだよ!」
飲んでみるとまろやかな口当たりで、ベリー系の果実味が口に広がる。酸が柔らかく果実味もしっかり感じられるのは、やはりドナスが温暖な気候だからなのだろう。
バランスがよくスムーズに飲み進められるが、旨味があり決して軽いわけではない。熟成を待たなくても若いうちから十分に楽しめるだろう。
ナポレオンがどんなワインが好みだったのかを知ってみるのも一興ではないだろうか?